忘れられた病棟がある。 この病棟には、たとえばこんな人々が強制的に送られてくる。精神の疾患が悪化して行動のコントロールが難しいまま傷害致死などの事件におよび、不起訴や無罪になった人たち。そう、忘れられた病棟とは、刑事責任能力が問われない触法精神障害者が送られる特別病棟のことだ。国内30カ所の公立病院のなかに整備され、病床数は800床ほどだ。34万床といわれる特異な日本の精神病院事情にあって、その数だけを見れば小さい。 専用病棟の存在は、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を起こした者の医療と観察に関する法律」、略して「医療観察法」と呼ばれる法が土台となっている。入院期限に上限はない。患者の平均在院日数は長期化し、2年半になろうとしている。退院後も、法務省の保護観察所の監督下で、原則3年、最長5年間の通院義務が科せられる。従来の措置入院制度に加え、治療の継続と収容が強化された。 この社会を犯罪
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