ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (61)

  • 動物群に広がる多様な知性──『鳥頭なんて誰が言った? 動物の「知能」にかんする大いなる誤解』 - 基本読書

    鳥頭なんて誰が言った? 動物の「知能」にかんする大いなる誤解 作者: エマニュエルプイドバ出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/05/31メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るこんなタイトルと書名なので最初鳥の知能のかと思ったがそうではなく、動物全般の知能の多様性についての一冊である。基的にはアリやらハチやら鳥やらが発揮する豊富な知性の例をあげながら、「人間は知能の序列で最高位にいると多くの人は思っているかもしれないが、実際は知能の形態はさまざまで、誰が一番とかそういう区別は意味ないでしょ」ということを言っていくになる。文正味230ページほどの軽めのなので、サクッとお手軽に知性をめぐる旅を味わうことができるだろう。 したがって、私は、ピラミッドのような知能の序列を脇に置き、ヒトとほかの動物の能力を違う目で観る別の概念を用いることを提案する。この概念とは、環

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    septhika
    septhika 2019/06/12
  • 演技を通してその人の人生を浮かび上がらせてゆく──『プロフェッショナル13人が語る わたしの声優道』 - 基本読書

    プロフェッショナル13人が語るわたしの声優道 作者: 井上和彦,大谷育江,関智一,田中真弓,千葉繁,飛田展男,冨永みーな,朴璐美,速水奨,平田広明,三ツ矢雄二,宮充,森川智之,藤津亮太出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2019/05/25メディア: 単行この商品を含むブログを見る藤津亮太さんが聞き手となって行われた、インタビュー集である。すべて雑誌『Febri』に掲載されたもの。対象は1980年代後半から1990年代前半にキャリアをスタートさせた、今ではトップのベテランの人々で、連載の単行化は『声優語〜アニメに命を吹き込むプロフェッショナル〜』に続く二冊目/後篇となるけれども、こちらもビッグネーム揃いだ。13人の名前と目次のコピーを並べると下記になる。 朴 璐美  自分の体験・体感が根底にないと当にならない 井上和彦  自分の幅を全部使って演じたい 千葉 繁  主役は大っ嫌

    演技を通してその人の人生を浮かび上がらせてゆく──『プロフェッショナル13人が語る わたしの声優道』 - 基本読書
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    septhika 2019/06/04
  • それぞれ異なる味で楽しませてくれる、傑作巨大人型ロボットSF三部作がついに完結!──『巨神覚醒』 - 基本読書

    巨神降臨 上 (創元SF文庫) 作者: シルヴァン・ヌーヴェル,佐田千織出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/05/21メディア: 文庫この商品を含むブログを見るシルヴァン・ヌーヴェルのデビュー作『巨神計画』から始まる巨大人型ロボットSF三部作が、この『巨神降臨』でついに完結! いやーこれは当におもしろかった。一部、二部、三部とまったく異なる「巨大人型ロボット物」の方向性が展開し、エヴァ好きもイデオン好きもグレンダイザー好きもSF好きも全方向的に満足させてくれる、まさに傑作にふさわしい巨大人型(とはちょっと違うが)ロボットSFなのだ。 三部作全体の見取り図をざっと紹介する 巨神計画 文庫 (上)(下)セット メディア: セット買いこの商品を含むブログを見る未読者向けに全体の見取り図を紹介しよう。第一部『巨神計画』は、アメリカで発見された全長約6.9メートルにも及ぶ巨大な「手」

    それぞれ異なる味で楽しませてくれる、傑作巨大人型ロボットSF三部作がついに完結!──『巨神覚醒』 - 基本読書
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    septhika 2019/05/24
  • データ化すれば客観的に評価できるという考えの落とし穴──『測りすぎ──なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』 - 基本読書

    測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか? 作者: ジェリー・Z・ミュラー,松裕出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2019/04/27メディア: 単行この商品を含むブログを見る僕の業はWebプログラマで、こうした職業としてはありがちなこととして何社も転々としながら(時にフリーで)仕事をしているのだが、極少人数の企業をのぞけばだいたい「どうやって社員の成果を評価するか」といったところで試行錯誤している。 メンター的な存在が評価するようなケースもあれば、成果をできるだけ定量的・客観的に評価しようとするところもありと様々だが、やはりIT界隈ということもあり後者の機運の方が高い。より納得感のある評価制度があれば会社側も勤めている側もウィンウィンなので、定量的・客観的な評価が「当に」できるのであればそれは良いことなのだけれども、あんまり「こりゃうまくいっている!」というところは

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    septhika 2019/05/21
  • ドラゴンカーセックス奇譚から人が死んだら電柱になる世界の話まで揃った奇想短篇集──『流れよわが涙、と孔明は言った』 - 基本読書

    流れよわが涙、と孔明は言った (ハヤカワ文庫JA) 作者: 三方行成出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/04/18メディア: 文庫この商品を含むブログを見るシンデレラや竹取物語といった童話が、もし人間が科学技術によってその姿を変質させたトランスヒューマン時代という設定で語り直されたら──さらには、その話の最後に、”ガンマ線バースト”が世界に降り注いで無茶苦茶になったら──、というぱっと見完全に意味不明な状況を描きあげていく奇作『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』の著者である三方行成の最新作、『流れよわが涙、と孔明は言った』はそれに負けず劣らず無茶苦茶な状況が連続する奇想5篇の短篇集である。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp SFコンテストの優秀賞を受賞したトランス〜が刊行されたのが2018年11月のことだから、それから僅か半年ばかりの間で次作が出

    ドラゴンカーセックス奇譚から人が死んだら電柱になる世界の話まで揃った奇想短篇集──『流れよわが涙、と孔明は言った』 - 基本読書
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    septhika 2019/04/22
  • 未来を見る方法──『WTF経済 ―絶望または驚異の未来と我々の選択』 - 基本読書

    WTF経済 ―絶望または驚異の未来と我々の選択 作者: Tim O'Reilly,山形浩生出版社/メーカー: オライリージャパン発売日: 2019/02/26メディア: 単行この商品を含むブログを見るプログラマからすると頭が上がらない技術書出版社のボス、ティム・オライリーによる、テクノロジーと未来についての一冊である。書名の「WTF経済」って何、と思うかもしれないが、WTFとは、what the fuck,なんじゃこりゃとかなんてこった的な表現で、人工知能iPhone、ウーバーなど、驚異的な技術と発想の産物であると同時に、多くの人が恐怖と共に受け入れてきたWTF? 製品を、これまでの捉え方とは「ちがう道で」選び、受け入れていかなければならないと語る啓蒙の書である。 『大きな経済変革の時代に、それをテクノロジーのせいにするのは簡単だ。だが問題もその解決策も、人間の選択の結果なのだ。』『驚

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    septhika 2019/03/18
  • 騙され、不利益を被らないないために必要な基礎知識──『データは騙る 改竄・捏造・不正を見抜く統計学』 - 基本読書

    データは騙る: 改竄・捏造・不正を見抜く統計学 作者: ゲアリー・スミス,川添節子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/02/20メディア: 単行この商品を含むブログを見るファクトの価値が高まり続けている昨今だが、そうはいっても何がファクトなのかを見極めるのは難しい。リアルに存在している石に向かって「そこに石がありますよね❔」のような100人中100人が同意するようなファクトばかりがこの世に溢れかえっているわけではなく、ファクトの中にも「だれがどうみてもファクト中のファクト」なやつと「ファクトからずり落ちそうなファクト」とかいろいろなレベルがある。そのレベル分けをある程度自分でできるために必要なのが、統計の知識である。 書『データは騙る 改竄・捏造・不正を見抜く統計学』は、そんな統計の知識の中でもとりわけ「騙り」の見分け方に焦点を当てた一冊だ。「パターン、パターン、パターン」

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    septhika 2019/02/25
  • 文化的な営みは感情に起源を持つ──『進化の意外な順序ー感情、意識、創造性と文化の起源』 - 基本読書

    進化の意外な順序ー感情、意識、創造性と文化の起源 作者: アントニオ・ダマシオ,高橋洋出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2019/02/01メディア: 単行この商品を含むブログを見る現代神経科学の巨人アントニオ・ダマシオの最新邦訳である。専門分野である神経科学を超えて、生物学、細胞学、文化・社会までを語る重厚なで、正直一回読んだだけでは意図が読み取れなかったところが多々あり、その一回読むのにも一週間ぐらいかかった、けっこうな難物だ。とはいえ、書かれている内容自体はとても興味深く、おもしろい。もしそうでなかったら、とっくに放り投げていたところだろう。 さて、これが何についてのなのかというと、簡潔に書けば感情や情動の世界についての話である。なぜ、いかにして情動が生じるのか。わたしたちはどのようにそれを感じるのか。脳と身体、そして感情や心はどのように結びついているのか。人間という種が生み

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    septhika 2019/02/22
  • 奇妙で奇天烈、詩情とヴィジョンに支えられた快作揃いのSFアンソロジー──『Genesis 一万年の午後』 - 基本読書

    Genesis 一万年の午後 (創元日SFアンソロジー) (創元日SFアンソロジー 1) 作者: 堀晃ほか出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/12/20メディア: 単行この商品を含むブログを見るSFアンソロジーは『NOVA 2019年春号』が出たばかりだが、今度は東京創元社から創元のNOVAと言われていた『Genesis 一万年の午後』が出た! huyukiitoichi.hatenadiary.jp NOVAの方がそれぞれの著者の持ち味・テーマを前面に押し出した、わりとストレート寄りのSFが多かったのに比べると、このGenesisは作家の多くが東京創元SF短編賞(この賞で募集しているのは”広義の”SFで、受賞作も幅広い)の受賞者に寄っており、作風としてもストレンジ、スペキュレイティブな方に振られている。変なものを書かせたら一級品の高山羽根子、倉田タカシや宮内悠介に、百

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    septhika 2018/12/27
  • 犬の世界を知る一冊──『犬であるとはどういうことか―その鼻が教える匂いの世界』 - 基本読書

    犬であるとはどういうことか―その鼻が教える匂いの世界 作者: アレクサンドラ・ホロウィッツ,竹内和世出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2018/12/13メディア: 単行この商品を含むブログを見る犬を飼っており、散歩させている人たちは重々承知の助だと思うが、とにかく犬というのは外を散歩させているとよく匂いを嗅ぐ。まるで人間が物を見るようにして匂いを嗅ぐ。当たり前のことなのでこちらもそんなことに驚いたりはしないが、改めて考えてみると少し不思議ではある。あんなに一生懸命嗅いで、犬はいったいどのような情報を得ているのか。その感じ方は何なのか。犬であるとはどういうことか。 書はそのようなテーマを追うノンフィクションである。脳科学的な分析あり、匂いそれ自体、犬がそこからどのような情報を得ているのかといった化学的な分析あり、同時に糞やトリュフ、麻薬、がん、人探しなど様々な「匂い検知犬」の実態につ

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    septhika 2018/12/20
  • マジのアメリカ合衆国元大統領が書いたサイバー・サスペンス──『大統領失踪』 - 基本読書

    大統領失踪 上巻 作者: ビルクリントン,ジェイムズパタースン,越前敏弥,久野郁子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/12/05メディア: 単行この商品を含むブログを見る大統領失踪 下巻 作者: ビルクリントン,ジェイムズパタースン,越前敏弥,久野郁子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/12/05メディア: 単行この商品を含むブログを見るビル・クリントンといえばアメリカ合衆国元大統領だが、そんな彼がベストセラー作家のジェイムズ・パタースンと組んで、エンタメ、それもガチのアメリカ合衆国大統領を主人公に書いたエンタメ小説がこの『大統領失踪』だ。その書名の通りに(原題:the president is missing)大統領が失踪しちゃう話なのだが、それは米国を悪夢的なサイバー攻撃から守ることと関連していて──と、側近の部下すらも信用できない状況下で英雄的な活動をする

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    septhika 2018/12/12
  • 脳が進化していくどのタイミングで神が現れたのか?──『神は、脳がつくった――200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源』 - 基本読書

    神は、脳がつくった 200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源 作者: E.フラー・トリー,寺町朋子出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2018/09/27メディア: 単行この商品を含むブログを見る神は脳がつくったとはいうが、だいたいの感情や概念は脳が作っとるじゃろと思いながら読み始めたのだが、原題は『EVOLVING BRAINS, EMERGING GODS』。ようは「具体的に脳が進化していく過程でどの機能が追加された時に、神が出現したのか?」という、人間の認知能力の発展と脳の解剖学的機能のを追うサイエンスノンフィクションだった。神は主題ではあるが、取り扱われるのはそれだけではない。 認知能力が増大した5つの変化 書では主に、認知能力が増大した5つの重要な段階を中心に取り上げていくことになるが、最初に語られるのはヒト属のホモ・ハビリスである。彼らは230万年前から1

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    septhika 2018/11/13
  • 異世界からの”帰還後に”苦悩を抱き続ける少女たち──『不思議の国の少女たち』 - 基本読書

    不思議の国の少女たち (創元推理文庫) 作者: ショーニン・マグワイア,原島文世出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/10/31メディア: 文庫この商品を含むブログを見る『不思議の国の少女たち』とは不思議な題名だが、読み始めてすぐに納得がいった。これは「不思議の国」や「ナルニア国」といったファンタジックな世界から”帰還した後”の少年少女たちが集まる全寮制の学校での物語なのだ。子供たちは異世界で大冒険を成し遂げた後、さまざまな理由によって元の世界へと帰還する。そして、その時の経験を大人たちに語るが、まずもってその内容が正しく理解されることはない。 大人からすればそれは子供にありがちな幻想的な誇大妄想、あるいは何らかの理由によって家出した時の、精神的トラウマによるショック症状にしか捉えられないからだ。そうした子供たちを救うために、学校は存在する。『入学するかもしれない子どもたちにと

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    septhika 2018/11/13
  • 世界を少しでも自由な場所へと変えていく、プログラマ主人公の連作短篇集──『ハロー・ワールド』 - 基本読書

    Amazon.co.jp限定】ハロー・ワールド(特典: オリジナルショートストーリー データ配信) 作者: 藤井太洋出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/10/18メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見るhello worldというのはプログラマにとっては特別な言葉である。 新しい言語(RubyJavaなどのこと)を学ぶとき、新しいライブラリを試す時、まず最初にその言語の特性を把握するために実行するのが、この”hello world”を何らかの形でシステム上で表示させることだからだ。terminalという黒い画面の中で"hello world"と標準出力させたり、html上で表示させたり様々だが、プログラマは新しい世界に入っていくたびに”hello world”していくわけなのである。 で、藤井太洋『ハロー・ワールド』である。藤井さん自身もともと

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    septhika 2018/11/08
  • 職場に横行する性差別との戦い方──『フェミニスト・ファイト・クラブ 「職場の女性差別」サバイバルマニュアル』 - 基本読書

    フェミニスト・ファイト・クラブ 「職場の女性差別」サバイバルマニュアル 作者: ジェシカ・ベネット,Jessica Bennett,岩田佳代子出版社/メーカー: 海と月社発売日: 2018/08/31メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る昨今職場(やその他の場所)での性差別といったものは徐々に問題として取り上げられる機会が増え、解消に向かっているようにも見えるが、実態としてはまだまだ道半ばといったところだろう。だいたい「完全に差別が解消された状況」などというものがあるのかどうかもわからないが(終わりなきバランス調整があるだけかもしれない)。 「差別」というと強い言葉に聞こえる・見えるが、実態としては差別をしている側がそうと意識せずにしているケースもある。たとえば女性はお茶くみやゴミ出しをして当然だと「一言も言っておらず」、勝手に女性がやってくれているのだから好きでやっ

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    septhika 2018/10/22
  • 失われた技術を復元する──『ジャイロモノレール』 - 基本読書

    書はジャイロモノレールについての概説書である。 ジャイロモノレールとはレールが一の鉄道の名称である「モノレール」にジャイロスコープを利用し、無支持で走行できる安定性を付与したものになるが、この技術は20世紀のはじめ頃(1900〜1910年)に開発され、その後大戦に突入したことで開発は中断。そのまま、それを成立させる技術も失われてしまっていた。 もともとモノレールが1レールで移動できるので、鉄道と比べれば2倍の輸送効率となり、ジャイロモノレールは既存の鉄道レールの上に乗っかってバランスをとることもできれば、それ以外の場所でもレールを一置くだけで走行できるなど、敷設費が安くおさえられる利点がある。ジャイロスコープを用いた車体の構築など、体費用は多額という難点もあり、一長一短ではあるものの、使い所はあるとみられていた。だが、一度開発が中断した後、再度この技術を再現しようとする人は長らく現

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    septhika 2018/10/11
  • 男と女、虚構と事実、過去と未来、微妙でありながら大胆──『両方になる』 - 基本読書

    両方になる (Shinchosha CREST BOOKS) 作者: アリ・スミス,木原善彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2018/09/27メディア: 単行この商品を含むブログを見る『両方になる』はスコットランド生まれのアリ・スミスによる長編七作目になる。邦訳としては2003年に『ホテルワールド』が出た他、岸佐知子編の『変愛小説集』などいくつかの短編が訳されているばかりで、あまり日で知られている作家ではないだろう。僕も今回はじめて読んだのだけれども、これがまあおもしろい。 じっと見つめて細部を観れば観るほど複雑なストーリーが脳内に練り上がってくる一つの絵画を鑑賞しているようなおもしろさがあり、どちらも同じく「第一部」からなる物語はどちらから読むかで物語に対する印象を大きく変えるだろう。実際、この『両方になる』は原書の販売方法も特殊で、同じ書名ながらもバージョン違いのが二冊売

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    septhika 2018/10/03
  • 〈水なし洪水〉が押し寄せた人類の終末を描く──『洪水の年』 - 基本読書

    洪水の年(上) 作者: マーガレット・アトウッド,佐藤アヤ子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2018/09/22メディア: 単行この商品を含むブログを見る洪水の年(下) 作者: マーガレット・アトウッド,佐藤アヤ子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2018/09/22メディア: 単行この商品を含むブログを見る『侍女の物語』のマーガレット・アトウッドの最新邦訳である。作品としては〈マッドアダムの物語〉三部作の『オリクスとクレイク』に続く第二部目だが、世界観と一部登場人物が共通しているが話としては独立しているのでここから読み始めてぜんぜんOK。〈水なし洪水〉と呼ばれる何らかの感染症によって人類の多くが亡くなってしまった後の世界をタフでハードに生き抜いていく、二人の女性の物語だ。 詩的でリズミカルな文体は驚異的に読みやすいうえに癖になり、二人の女性が、この滅亡一歩手前の世界がこの先

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    septhika 2018/09/27
  • 一度も会ったことのない幼馴染を探している──『君の話』 - 基本読書

    君の話 作者: 三秋縋,紺野真弓出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/07/19メディア: 単行この商品を含むブログを見る恋愛ゲーム(というかギャルゲーとかエロゲー)のヒロインというのはだいたいみんな何らかの闇だったり問題を抱えていたり主人公と幼馴染だったりして、たいてい相当な美少女で、健気で誠実でありこちらを最終的には裏切らないようにみえる。そしてルートの終わりで問題を解決することでラブラブになるものだが、それは虚構、作り上げられた物語なのであって、現実にはそんな都合のいい存在はいないわけである。 じゃあ、現実にそんな存在が目の前に現れるとしたら、どのような状況が仮定されるだろうか。『君の話』はそうした状況に巻き込まれた語り手を中心に、”究極のヒロイン”を解明していく物語である。著者は『三日間の幸福』や『恋する寄生虫』など科学的知見に裏打ちされた特殊状況下での恋愛譚を中心にこ

    一度も会ったことのない幼馴染を探している──『君の話』 - 基本読書
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    septhika 2018/07/31
  • なぜギャンブルにハマってしまうのか──『デザインされたギャンブル依存症』 - 基本読書

    デザインされたギャンブル依存症 作者: ナターシャ・ダウ・シュール,日暮雅通出版社/メーカー: 青土社発売日: 2018/06/25メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るギャンブル依存というと「依存するほうが悪い。とっととやめればいいんだから」と思う人もいるかもしれないが、実態としては丁寧にデザインされたカジノ、またギャンブル・ゲームというのは、人をどこまでも合理的にやめるにやめられない状態へと叩き込んでいく仕組みがある。書は主にラスヴェガスのギャンブル・マシンを通してそうした仕組みを解き明かし、また依存症者への詳細なインタビューを通し、ハメる側、ハメられた側の実体を描き出していくギャンブル・ノンフィクションである。 原書刊行は2012年のうえ、出てくる話の事例は著者の取材時期のせいなのかなんなのか2000年前後、2008年前後の物が多く、さらなる進展が進んでいるで

    なぜギャンブルにハマってしまうのか──『デザインされたギャンブル依存症』 - 基本読書
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    septhika 2018/06/28