生後3カ月の時、母親代わりだった飼育係のトーマス・デルフラインさんとにらめっこ。クヌートは世界でも例の少ない人工飼育で育てられた=2007年3月、ベルリン動物園(AP) 産声を上げてから2年半。一時は世界中のメディアをにぎわした「ベルリン動物園」のシロクマのクヌートは、今もドイツ中の人気者だ。昨秋、つきっきりで育て上げた飼育係のトーマス・デルフラインさんを病気で失い、孤独感に襲われているとも指摘されるが、“母親”の存在を失ってもなお、けなげに生きる姿は、人々の心をとらえて放さないようだ。 育ての親の死を超えて ベルリンの「動物園」駅から歩いて3分。うっそうと樹木が茂る動物園の小道を歩いていくと、岩山の上で寝そべるクヌートの姿があった。体長2メートル超、体重は数百キロあるだろうか。 生まれた当時のぬいぐるみのような、あどけない表情は今はない。だが、訪れる人々は、成長したクヌートの大人の表情の