雇用流動性と失業保険、職業訓練を組み合わせた北欧の労働市場モデルが注目されている。だが、単純化した議論は危険だ。社会的な枠組み全体を捉える必要がある。 近年、日本社会のモデルとして北欧諸国を挙げる傾向が高まっているようだ。かつて高度成長期までは「国家が国民に福祉を保障する」西欧型福祉国家が理想像とされたが、石油ショックで西欧諸国が苦しむ姿を見て、1970年代から80年代には「会社が社員に福祉を保障する」日本型モデルがもてはやされた。 バブル崩壊で日本が失速すると、90年代から2000年代にかけては「個人が自分を支える」アングロサクソンモデルを褒め称える論調が横行した。そして、格差社会を糾弾する声が高まるなか、今度は「高福祉・高負担」の福祉国家として、北欧諸国をモデルとする議論へと一巡りしたということであろうか。