2022年6月5日、渡邉真梨(36)は1歳3カ月の息子を抱えながら、大阪・摂津市内の住宅にやってきた。ダイキン工業淀川製作所から歩いて10分ほどの距離だ。 この日、京都大学名誉教授の小泉昭夫と同准教授の原田浩二が、摂津の住民のPFOA曝露を調べる血液検査を実施した。住民みずから会場を手配した。検査を受けたのは、30代から80代の男女11人。渡邉もそのうちの一人だ。 渡邉は、ダイキン淀川製作所に隣接する別府(べふ)地区で生まれ育った。ダイキンがPFOAを製造・使用していた時期には、製作所近くの学校に通っていた。地域で採れた野菜を食べることもあった。 採血に参加したのは、息子の健康が気がかりだったからだ。 「私が食べたり飲んだりしたものは、お腹の赤ちゃんに届いてしまっているじゃないですか。PFOAは蓄積すると聞いて、この子は大丈夫なんかなって。ずっと不安だったんです」 採血前の問診票を記入する