日本人によるSF評論のアンソロジーだが、論争に関わった論文だけを集め、そこからSFの歴史を俯瞰する、という方針で編集されている。評論集でありながら、日本SF大賞を受賞した大作(値段も5000円超!)。年代も発表媒体もバラバラな論考が集められているものの、様々な論者によって小松左京、ハインライン、そして安部公房への評価が繰り返しリフレインされ、全体を通す芯のようになっているのが面白い。 それにしても、ここまで自らの定義について議論を繰り返してきたジャンル文学というのは、他に無いかも知れない。まさに論争がSFを育んだ、というところか。ただ正直な所、今の自分の意識としてはこの自意識過剰ぶりが、ちょっとうっとおしい。ニューウエーブ論争あたりは特にそう感じるのだが、これらの論文がかもし出してる「雰囲気」に、とても辛いものを感じてしまう。個々の作品やニューウェーブ運動総体の成果としては評価するのだけれ