第1回 明治13年1月25日、発会式 銀座にある交詢社ビルディングの佇まいは瀟洒で、いかにも粒よりの紳士たちが集うに相応しい。明治、大正、昭和の幾星霜を経て、交詢社は現在も活動を続ける「社交クラブ」である。厳しい入社審査を通った紳士が集まる倶楽部だけに、部外者の眼には閉鎖的に映るかもしれない。だが、草創期の交詢社が近代日本に果たそうとした役割に関心を寄せるとき、社員ならずともその歴史に興味を呼び起こされずにはいられなくなる。 ★連載にあたって 交詢社の通史に関しては『交詢社百年史』(交詢社、1983年)に加えて、『交詢社の125年』(交詢社、2007年)も刊行された。前者が詳細な資料の収集に基づいた大部であるのに対し、後者は簡潔ながら最新の研究動向を反映して新たな視点を加えた。上記2書によって通史を知ることができる。この連載では現代の我々が暮らす社会の原点を再認識する“しるべ”として交詢社