「この仕事量は捨てられない」と彼は言う。「仕事量」という独特の表現を聞いて、昨年11月のサウジアラビア戦が脳裏をかすめる。 原口元気(ヘルタ・ベルリン)が必死の形相でボールを追いかける姿に、埼玉スタジアムが沸いたのは前半40分のことだった。敵陣のペナルティエリア手前から相手のパス回しに食らいつき、猛ダッシュで自陣まで戻る。奪ったボールを受けた清武弘嗣(セビージャ)がすぐに失うも、長谷部誠(フランクフルト)が素早くこぼれ球を拾う。そこから左サイドのスペースに出されたロングパスに反応したのは、またも原口だった。惜しくもパスはつながらなかったが、この“走り”は見ている者の心を打つだけの迫力があった。 2016年、原口は日本代表の舞台で強烈なインパクトを残した。ワールドカップ・アジア最終予選での4試合連続ゴールは日本史上初。最終予選初戦でまさかの敗戦を喫し、窮地に立たされていたハリルジャパンの救世