月浦 崇 京都大学 人間・環境学研究科 認知科学分野 DOI:10.14931/bsd.1421 原稿受付日:2012年5月9日 原稿完成日:2013年2月3日 担当編集委員:定藤 規弘(自然科学研究機構 生理学研究所 大脳皮質機能研究系) 想起とは,記憶の基本的過程のひとつであり、保持している情報を適切なタイミングと場所で「思い出す」過程のことを指す。誤想起とは想起エラーのひとつであり、実際には記憶として保持していない事象を、保持しているものとして想起してしまうことである。想起はすべてのタイプの記憶に共通の過程であるが、想起意識がある場合(顕在的想起)とない場合(潜在的想起)とがある。これまでの認知神経科学的研究の成果から、特にエピソード記憶の想起には側頭葉内側面、前頭前野、頭頂葉などの領域が重要であることが知られている。また、エピソード記憶の想起時には誤想起時と比較して、記憶に付随して