高校生の頃、友達と二人で下関まで旅行した。移動手段はママチャリ、宿を取らずに野宿という若さにすべてを任せた強行軍であったものの、生まれて初めての長期旅行ということもあり、私の旅行歴の原点というべき大冒険であった。 辿ったルートは単純明快。神奈川県の自宅からスタートし、ひたすら国道1号線を突き進む。名古屋を過ぎたら紀伊半島を海岸線沿いにぐるっと周り、大阪からは国道2号線を辿るというものである。 その道中、志摩半島で不思議なトンネルに出くわした。地図に赤く記された国道を走っていたのだが、いつしか道は細くくねった山道となり、やがて私たちの面前に見たこともない馬蹄型のトンネルが姿を現したのだ。 自動車が一台通れるかどうかも怪しいくらいに狭いうえ、坑内に照明はなく真っ暗。おそるおそる足を踏み入れると、天井から滴った水が頭に当たり、死ぬほど驚いた覚えがある。 あのトンネルは今もなお存在するのだろうか。