『モモ』を初めて読んだのは小6の時。中学入試の面接の待ち時間に読む本を買おうと、書店で偶然手に取ったものだ。以来約40年、大切にしてきた。今も本棚のトップポジションに置いてある。 この物語の世界では、人々はゆったりと生活を楽しんでいた。世間話をし、自然に親しみ、子どもたちは空想にふけっていた。しかし、時間泥棒がいつのまにか人々の間に忍び込み、「時間を節約して貯蓄しましょう」大キャンペーンを成功させる。お店は回転率を高め、働く人は分刻みのスケジュールをこなし、子どもたちは「無駄なことをしない」よう躾けられるようになった。人々はお互いにちゃんと話す時間を取らなくなり、不機嫌でギスギスした世の中になっていく。皆が節約していると思っている時間は、実は時間泥棒に奪われていただけだった。主人公のモモは、このカラクリを理解し、人々から奪われた時間を取り戻す。 この本では、「一人ひとりに与えられた時間」は