資生堂のシンボルである花椿(つばき)のマークは、椿の花を水に浮かべた様子を表現したもの。その現場に立ち会い絵筆をとったのが、創立者である福原有信の三男で資生堂の初代社長、信三だ。 信三は米国に渡って薬学の修士を取得した後、フランス・パリで芸術家らと交流し写真も学ぶ。こうした経歴も手伝い、同社の経営に芸術を持ち込んだ。“手腕”を発揮したのは事業を受け継いだ翌年で、薬品・薬局から化粧品に事業の軸足を移した時のことだ。 当時は大量の粗悪品が流通していたため、品質体制を強化する目的で研究室を創設した。同時に立ち上げたのが、他社には存在しなかった意匠部だ。世の中には文字を駆使した誇大広告が蔓延(まんえん)しているため、形状や模様、色彩などを通じ美観を訴求することが大切という考えを踏まえて設立することになった。 信三直轄のデザイン組織は先見の明があった。意匠部の歴史は100年以上も続いており、多くの著