■山と谷のうんちくが愉しい タイトルに「愉しむ」とあるが、愉しめなかったなあ。いや、内容が薄いとかダメとかいうのではないのです。古図と、現在の地図や写真を並べて、東京の町がどのように変貌したかをわかりやすく紹介してある。第2部が「東京お屋敷山物語」で、昔こんなお屋敷があったところで……と、「お屋敷」を中心に見ている。愉しめなかった理由は、一にも二にもその「お屋敷」にある。明治の地図の「ナントカ伯爵邸」「カントカ子爵邸」、その広さを、現代の地図と比べられることで、まざまざと見せつけられるようだ。資産家打倒!の念がむらむらと湧き上がる。 しかし革命などなくても現在、お屋敷はバラバラに切り売りされて往時をしのぶものなどなく、金持ち(主に大名華族や実業家)はその財を失ったわけだ。それで私の恨みは雲散霧消したかといえば、切り売りされたってまだまだその土地は広く、さらにそこは一等地である。うちが一生働