プロレタリア文学の代表作、小林多喜二(1903〜1933)の「蟹工船」ブームが止まらない。新潮文庫版の増刷部数は今年これまでに35万7000部に上り、例年のざっと70倍のペース。この2か月間だけで、30万部以上を売り上げた。今なぜ、「蟹工船」なのか――。 「これ、今売れてるんだよね」。三省堂書店神保町本店では、平積みにされた「蟹工船」を、2人連れの若者が手にとっていた。同店は1、2階の数か所に新潮文庫版だけでなく岩波文庫版や映画DVD、漫画版も並べる特設コーナーを設置。昨年まではどの書店でも文庫の棚に1冊ある程度だったが、今や新刊のベストセラー並みの“待遇”を受けている。 「蟹工船」は、過酷な労働を強いられた労働者が団結して立ち上がるまでを描き、1929年に発表された作品。新潮社によると、購読層は10〜20代が30%、30〜40代が45%と、若者や働き盛り世代が7割以上を占める。 インター