大英博物館がしでかした途方(とほう)もない文化財破壊として知られるのが、エルギン・マーブル洗浄事件である。そう、ギリシャ政府が英国に返還要求を突きつけているパルテノン神殿の大理石彫刻群の話である▲1930年代、これらを見ばえよくしようと、金属たわしと研磨剤で白くぴかぴかに磨いてしまったのだ。これら彫刻はもともと彩色がほどこされていたのだが、色の残っていた部分も化学的な分析のできる痕跡(こんせき)もみな削り取られた▲事件の背景には「ギリシャ彫刻は白でなければ」という西欧近代の美意識があったといわれる。過去の文化や生活を時を超えて伝える文化財を、今の価値観や都合で破壊することの罪深さはいくら強調してもしすぎることはあるまい▲こちらは「Wの悲劇」と呼ばれていたそうな。岩手県立博物館の学芸員が出土した金属製の文化財約200点から所有者に無断でサンプルを切り取っていたという小紙の特報である。「W」は