クルーグマンが、ヒックス的なマクロ経済の見方は、今般の経済危機において、需要については極めて上手く機能したが、供給についてはそれほど上手く行かなかった、とブログで論じた。というのは、インフレと失業の平面図において、70年代と80年代の過去の不況期については時計方向のスパイラルが見られたが、今回は見られないからである(下図)。 インフレが過去のインフレと失業率に依存するという「加速度的な」フィリップス曲線からはデフレが高進するはずであったが、現実にはそうはならなかった。その理由としては、名目賃金の下方硬直性や、インフレ期待の「固定化」(“anchored” inflation expectations)が挙げられ、クルーグマン自身もそうした説を過去に引用したことがあったが、標準的なマクロ経済学はデフレが起きなかったというこうした意外性を未だ十分に取り入れていない、とクルーグマンは言う。 また