電話が鳴る。 と、思わず身構える。 最近、固定電話にかかってくる電話は、マトモなものの方が少ない。 先物取引、銀行のキャッシング勧誘、保険会社の契約確認を装った新商品セールス、生協のロボット電話、宗教団体のランダム折伏……もしかすると、あと5年ほどで固定電話のビジネスモデルは壊滅するかもしれない。それほど、回線に乗る通話の内容は劣化してきている。 いまのところはまだ、登録に際して自宅の電話番号を必須とするタイプの契約書類が残っていたりする。が、その種の設定も順次カタチを変えて行くはずで、そうなると、いよいよ「家の電話番号」を持っていることが「市民」の証であった時代は過去のものになる。この流れは誰にもとめられないだろう。 おそらく、10年後のこの国を動かしている新しい市民階級は、新聞と電話と自家用車を持っていない。 それらの代わりに、彼らが何を持っているのかは、まだはっきりしない。 もしかし