2年前にお会いしたときは「老人のテロ」をテーマに小説を書こうとしていた。進捗(しんちょく)を聞くと「コロナでなかなか難しいね」と言う。「やっぱりコロナが、物語性を奪うというか、壊しちゃうっていうか。物語る力がやられる感じがしてね。パッションが起きなくなっている」 疫病の騒ぎが、人の情操に影響を与えるのか。「そう。だからコロナを取り込んだような良い小説は出ないと思うよ」。あくまでも作家、辺見庸さん(76)の直感である。でも、なぜか、詩だけは書いているそうだ。 洋食店で席に着くとメモを取り出し、自殺の話を始めた。 「僕はマンションの上の方に住んでいて、ベランダから駅のホームがよく見えるんです。最近、飛び込み自殺があって、実際に見たわけじゃないけど、結構ショックでね。通いのヘルパーさんも心痛めてて。そしたら、8月の全国の自殺者数が1849人(9月10日の速報値)で前年同月と比べ、246人増えたと
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