1969年の夏、リチャードという名前の青年がベルリンの壁を訪れた。 ハーバード大学を出たばかりで、その年の夏休みをヨーロッパ旅行に当てていた。 ベルリンの壁(Berliner Mauer)は、冷戦の真っ只中にあった1961年8月13日に東ドイツ(ドイツ民主共和国)政府によって建設された。 リチャードは大学では物理学を学んだが、自分が複雑な東西関係のパワーゲームを分析するのに役に立ちそうな知識を持っていないことと考えた。 しかし、とにかくベルリンの壁ができた年は知っていた。 たったそれだけの知識から、リチャードは、ベルリンの壁が今後いつまで存在しているかを予測した。 「ベルリンの壁は存続するのは、長くてあと24年だろう」 リチャードは、この予測の精度があまり高くないことも知っていた。 だが、まったく的外れのものでないことも分かっていた。 1989年11月、ベルリンの壁は崩壊した。リチャードの