新宿鮫X 絆回廊 / 大沢在昌 若くして地位を確立した中国マフィアのボス、陸永昌。定期的に届く日本からの手紙を読んだ彼は、パイプのある情報期間に電話をかけ、樫原茂という男の行方を探してほしいと頼む。 鮫島は売人の露崎から情報提供を受けた。刑務所から出所したばかりの白髪の大男が、拳銃を欲しがっているという。手に入れた拳銃で、ある警察官を殺すつもりだというのだ。須藤会の名前を出したことから、すっカタギではないことがわかる。須藤会はすでに潰れているが、もと組員の松沢という男が、今は栄勇会に在籍し、吉田と名を変えて若頭補佐の地位にある。姓が変わったのは、中国残留孤児二世の妻と結婚し、養子になったためだ。吉田が外様としては異例と言える出世をしているのは、それまで中国人とのつながりがなかった栄勇会において、ビジネスのつなぎ役を果たしているためと思われた。 ところが調査中、話を聞いていた須藤会の組長が残