戦後日本で読者の圧倒的な支持を得た作家の山崎豊子(1924~2013年)。作品の累計発行部数は4000万部を超え、「白い巨塔」や「大地の子」など大ヒットした映像作品も多い。 山崎作品はなぜ、これほどまで人々の心をひきつけるのか。 <「山崎豊子」という社会現象>を自著で分析した社会学者の大澤真幸さん(65)は、「戦後日本の欺まん」という意外な視点から読み解き、ある教訓を導いた。「日本人はいまだに『戦後』を生き、敗戦を乗り越えられていない。山崎作品は、戦後日本の弱点というべき課題を逆の形で示しているのです」。一体どういうことだろう。 普遍的な大義の追求 学生生活を経てほどなく大学教員になった大澤さんは、「社会勉強のため」に山崎作品を読んできたという。「エンタメ的に面白いなどいろんな要素はありますが、サラリーマン社会のように自分がよく知らない世界のリアリティーに触れたいという思いがありました」。
