現代美術家の森村泰昌さん。実家の帳場や木箱は私設美術館「M@M(モリムラ@ミュージアム)」で受付として使っている=大阪市住之江区で2024年6月、山田夢留撮影 新型コロナウイルス禍で芸術が「不要不急」とされたことへの反論だろうか。そう思って本書を手に取ると、話は意外にも「実家の空き家問題」から始まった。 現代美術家の森村泰昌さんが新著『生き延びるために芸術は必要か』(光文社新書)を出版した。名画や歴史上の人物にふんしたセルフポートレート作品で知られる森村さんの芸術論とは。 傷んだ「空き家」への愛着 実家は茶葉を商う店舗兼住宅だった木造家屋。産地から大きな袋でひっきりなしに届く茶葉を父親がブレンドし、販売していた。行商のおっちゃんたちは森村さんを「やすぼん」と呼んだ。向かいは理髪店、隣はカメラ屋。前には路面電車が走っていた。 「何か身近な話から始めようと」軽い気持ちで書き始めたところ、「自分