齋藤 昭彦(新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野 教授)=執筆 ■過去:伝染病の減少,ワクチンの普及に伴う副反応・有害事象との闘いの歴史から学ぶ 予防接種は,人類の歴史に多大な影響を与えてきた。現在,世界では,21の感染症に対するワクチン(表1)が開発され,その普及によって感染症の防御・制圧に成功している。 一方,そのような輝かしい効果の裏には,ワクチンによる副反応,有害事象(ワクチンと実際には関係のない,ワクチン接種後に起こる負の事象)の歴史もある。特に本邦の予防接種制度の歴史は,ワクチンの副反応,有害事象に影響を受けながら変遷を遂げてきた(表2)。 百日咳ワクチン中止による百日咳患者の増加 代表例としては,百日咳と百日咳ワクチンをめぐって予防接種制度が変遷した歴史があげられる。1940年代,国内では年間10万人以上が百日咳に罹患し,その10%が死亡していた。1950年以降に百日咳