ここからかなり抽象的な議論が多くなりますが,テンソルをきちんと理解するためには避けて通れません。 1.抽象ベクトル空間の定義 [1] ベクトル空間の厳密な定義から始めましょう。冒頭に 「体R」 という用語が出てきますが,これは実数と考えて読んでください。 集合Vが体R上の[#]ベクトル空間であるとは,次の2つの演算, ( I )和: Vの任意の2つの元 x,y からVの一つの元 z への対応, x,y → z または, x +y =z (x,y ,z ∈ V)( II )スカラー倍: Vの任意の元x とスカラー(係数)と呼ばれる体R に属する元 a からVの元,z への対応 a,x → z または, a・x =z (y ,z ∈ V ,a ∈ R ) ↑ しばしば,積の演算記号・ は省略します。)が定義されていて,さらに以下の規則が成り立つことである。 「+ に対して V の