東の渡殿《わたどの》の下をくぐって来る流れの筋を 仕変えたりする指図《さしず》に、 源氏は袿《うちぎ》を引き掛けたくつろぎ姿でいるのが また尼君にはうれしいのであった。 仏の閼伽《あか》の具などが縁に置かれてあるのを見て、 源氏はその中が尼君の部屋であることに気がついた。 「尼君はこちらにおいでになりますか。 だらしのない姿をしています」 と言って、 源氏は直衣《のうし》を取り寄せて着かえた。 几帳《きちょう》の前にすわって、 「子供がよい子に育ちましたのは、 あなたの祈りを仏様がいれてくだすったせいだろうと ありがたく思います。 俗をお離れになった清い御生活から、 私たちのためにまた世の中へ帰って来てくだすったことを 感謝しています。 明石ではまた一人でお残りになって、 どんなにこちらのことを想像して 心配していてくださるだろうと済まなく私は思っています」 となつかしいふうに話した。
![【源氏物語596 第18帖 松風20】源氏は袿《うちぎ》を引き掛けたくつろぎ姿で いた。尼君がおられるのに気付き直衣を取り寄せて着替えた。 - 源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/448a86ed304c16ca5edc441ec4eee573531fd6ab/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn-ak.f.st-hatena.com%2Fimages%2Ffotolife%2Fs%2Fsyounagon%2F20231203%2F20231203214126.png)