大学へ若君が寮試を受けに行く日は、 寮門に顕官の車が無数に止まった。 あらゆる廷臣が今日はここへ来ることかと思われる列席者の 派手《はで》に並んだ所へ、 人の介添えを受けながらはいって来た若君は、 大学生の仲間とは見ることもできないような 品のよい美しい顔をしていた。 例の貧乏学生の多い席末の座につかねばならないことで、 若君が迷惑そうな顔をしているのももっともに思われた。 ここでもまた叱るもの威嚇するものがあって不愉快であったが、 若君は少しも臆《おく》せずに進んで出て試験を受けた。 昔学問の盛んだった時代にも劣らず大学の栄えるころで、 上中下の各階級から学生が出ていたから、 いよいよ学問と見識の備わった人が輩出するばかりであった。 文人《もんにん》と擬生《ぎしょう》の試験も 若君は成績よく通ったため、 師も弟子《でし》もいっそう励みが出て学業を熱心にするようになった。 源氏の家でも始終