リアルサウンド映画部にて連載中の社会学者・宮台真司による映画批評。今回は10月17日放送のミュージシャン・ダースレイダーとのライブ配信企画「100分de宮台」特別編の一部を対談形式にて掲載する。“時間の逆行”が大きなテーマとなっている現在公開中の映画『TENET テネット』(以下、『TENET』)から「記憶と記録の構造」を読み解く。前編では、『TENET』が『メメント』と同じく「存在論的転回」の系譜上に位置すること、そしてその独特の構造を指摘した(参照:宮台真司の『TENET テネット』評(前編):『メメント』と同じく「存在論的転回」の系譜上にある)。続く後編では、『メメント』との比較により浮かび上がる不可解な倫理観、そして本作が潜在的に提起したある重大な問いについて論じる。 『TENET』と『メメント』の主人公の対称性 宮台真司(以下、宮台):そう。本人の望みにかかわらず「油を注がれた=
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