バンコクの都内には無数の野犬が生息している。飼い主の手に負えなくなった成犬が捨てられるケースが多いのは日本と同じだが、日本であれば保健所によって捕獲・安楽死させられる野犬たちも、タイでは生命を大切にする仏教観や保健当局の予算不足からそのまま野放しになっている。 そのため野犬の数は増加の一途をたどっており、いまや「野犬にはくれぐれも気をつけろ」という警句はバンコク在住の日本人のあいだでも一般常識として広く知れ渡るようになった。特にタイでは予防接種が義務付けられていないため狂犬病に感染している野犬も多く、万一にも噛みつかれてしまったら、ただちに病院へ行って検査・治療を受けないと死に直面するおそれがある。 バンコクの夜道を徘徊している野犬には2種類ある。ひとつは保健省管轄の所有者不明犬(大部分は雑種)、もうひとつは法務省管轄の日本産犬(大部分は貧困にあえいでいる)だ。どちらも人間に噛み付いて狂犬