清吾が齎した急報は阿弥を震撼させたが名古屋の仕事を疎かにする訳には行かない。当初は余裕を持ってする筈だった仕事を急行する事にした。既に準備万端整えていたお陰で慌てる必要が無かった事は幸いであった。 だが頭(かしら)の仇討ちと言わんばかりに、血気に逸った子分達の様子を憂慮した阿弥は改めて忠告を施す。 「お前ら、落ち着け! いいか、一家の掟を忘れるんじゃねー、あくまでも冷静沈着に事に当たらなければ絶対に下手打つんだよ、酷な言い方だけど頭もそれで死んじまったんだ、あいつはその事を身を持って教えてくれたんだよ、お前らの想いは想いとして嬉しい、だが仕事は別だ、感情的になったら負けなんだよ、分かるな!」 「へい、分かりました」 「じゃあ行くか」 阿弥に諫められた子分達は己が本分を再認識し、粛々と動き出す。月夜に照らされ仕事に赴く彼等の姿は静寂の中にも勇ましく、美しく冴えている、それはとても裏社会に生き
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