「今日でも未開社会に、俗に『ポトラッチ』と呼ばれている儀式 が行われるところがある。部族の勢力者が、みんなに厖大な贈 り物をし、大盤振る舞いをする。また、財宝を積み上げて惜しみ なく焼いたり、海に投げ捨ててしまう。・・・ソルボンヌの学生とし て、私が文化人類学の講義に通っていた時分、クラス仲間にこ の言葉をはやらせた。『今日はみんなでポトラッチしよう』など と、なけなしの金をハタきに、カフェへ繰り込んだりしたものだ」と語るのは、天才 画家 岡本太郎(1911-1996)である。 彼は、1931年(20歳)のとき、両親と一緒に渡仏した後、フラン スに一人残り、1940年(29歳)までパリに滞在した。その間、絵 の修業だけでなく、1938-9年には、パリ大学の学生として、マル セル・モース(Marcel Mauss 1872-1950)に師事して、文化人類 学(民族学)を学んだ。養女の岡本敏子