地上の生命の系統樹を知るように、宇宙の星々の系統樹を理解したい。今、私たちの目の前にあるこの世界の由来にもつながる壮大な問いを胸に抱き、星や惑星の形成に関して大きな成果を次々と挙げている気鋭の研究者、坂井南美さんの研究室に行ってみた! (文=川端裕人、写真=内海裕之) 前回、理化学研究所「坂井星・惑星形成研究室」の坂井南美さんの研究史を見ていたところ、ちょっと興味深いことに気づいた。坂井さんは、これまで女性がとても少ないことで知られている物理学科出身だ。学部もそうだし、大学院生・助教時代を過ごした研究室もそうだ。 また、坂井さんと同じジャンルの研究を検索していくと、ごく自然に同じ研究室(東大大学院・物理学専攻の山本智研究室)の2人の女性研究者の名前がヒットして、それぞれ、特筆すべき活躍をしていることも前回見た。 科学研究それ自体には性別は関係ないはずだけれど、理学系、工学系の研究者には、女
今年2月、埼玉県三芳町にあるアスクルの巨大物流倉庫で火災が発生、鎮火まで12日を要した。大規模化が進むネット通販の物流センター。新たな課題を露呈し、国は基準の見直しを進める。対策の陣頭指揮を執った岩田社長が火災後、初のロングインタビューに応じ、覚悟を語った。 (日経ビジネス2017年6月26日号より転載) 1950年8月大阪府生まれ。73年3月慶応義塾大学商学部を卒業、ライオン油脂(現ライオン)に入社。86年3月プラスに入社、92年5月アスクル事業推進室長、95年11月アスクル事業部長。97年3月プラスがアスクル事業を独立させたのに伴いアスクル社長に就任。2012年4月ヤフーとの業務資本提携を実現。(写真=稲垣 純也) 今年2月、アスクル全体の22%、個人向け事業「ロハコ」の62%の出荷量を担う埼玉県三芳町の物流倉庫「アスクルロジパーク首都圏」で火災が発生。鎮圧まで6日、鎮火まで12日を要
今回はあまり報道されなかった、でも、とてもとても、ものすごく大切な話を取り上げようと思う。 2月15日、「あらゆる立場の人々が参画できる社会の構築」を目的とする参議院の「国民生活・経済に関する調査会」参考人質疑が行われた。 参考人のひとり、熊谷晋一郎氏は生まれた時に酸欠状態になった後遺症で、肢体に障害が残る脳性麻痺患者として車いすで生活している。ご自身のリハビリ生活を赤裸々に描いた「リハビリの夜」(医学書院)は、第9回新潮ドキュメント賞を受賞。東京大学医学部に進んだのち小児科医として病院に勤務し、現在は東京大学先端科学技術研究センターで准教授を務めている。 「障害を持ちながら必死で生きていたけれど、今回の事件でそれを否定された気持ちになった、自分の尊厳が脅かされている」 神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」に入所していた19人が殺害された事件のとき、メディアへの取材にこう答えて
全体主義の象徴 前回の「ドン・キホーテは『進撃の巨人』の夢を見るか」に引用されたハンギョレの記事の見出し。なぜ「塩野七生」が入っているのですか。 鈴置:キル・ユンヒョン東京特派員が書いた「塩野七生、あるいは全体主義の誘惑」(5月27日、日本語版)のことですね。 オバマ(Barack Obama)大統領の広島訪問を論じたこの記事は「謝罪要求を口にさせない日本」を批判し「日本は全体主義に向かう」と警告しました。 キル・ユンヒョン特派員によれば「塩野七生」こそが、日本の全体主義を象徴します。だから見出しに入っているのです。 筆者は記事の冒頭で、塩野七生氏の著作を読破したと告白しています。しかし文末では、ソウルに戻ったらそれらの本はすべて片付ける、と書きました。 国の品位の差 どうしてですか。 鈴置:塩野七生氏が朝日新聞のインタビューに答え「無言で静かにオバマ大統領を迎えよう」と語ったからです。
日本を含め、いま世界各国で貧富の格差や不平等への関心が高まっている。先日、安倍首相と会談したノーベル経済学者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授が、著作などを通じて格差問題の是正や解決を世論に力強く訴えていることをご存知の方も多いだろう。 トマ・ピケティ仏パリ経済大学教授の『21世紀の資本』が世界的なベストセラーになり、我々の経済格差に関する情報が大幅に新しくなったことも記憶に新しい。適切な政策的介入、あるいは何らかの大きな変革がない限り格差はますます拡大していき、世界経済や社会のシステム全体に悪影響を及ぼす。そうした懸念は、アカデミアの内外を問わず確実に広がっている。 本稿では、この格差問題に触発されて、筆者がこのところ取り組んでいる新しい研究アイデアを紹介したい。格差問題が「問題」であり続けている大きな理由は、格差を解消するような再分配の実現が様々な理由から難しいからだ。 富
ふかしていたタバコを灰皿に押し付けると、浅黒い顔の中年男性は深いため息をついた。「同じ現場とは思えないよ。心底、がっかりしている」。 船造りを生業としてきたこの男性は数年前、意気揚々と長崎の土を踏んだ。10年ぶりに三菱重工業の客船建造に携われることを、楽しみにしていたからだ。かつて「ダイヤモンド・プリンセス」を造った時、現場を丹念に回って協力企業を統率する三菱重工の職人たちに魅せられた。「三菱の客船をやった」と言えばどの造船会社も一目置いてくれたし、自分自身、誇らしかった。 三菱重工が2011年に受注した大型客船「アイーダ・プリマ」の建造現場に、当時の面影はなかった。仕事は工程表どおりに進まず、大量の作業者で現場は混乱、しまいには3度の火災が起きた。3月14日に何とか客先への引渡しを終えたものの、当初の予定からは1年遅れだ。客船事業の特別損失は累計で1800億円を超え、事業を存続すべきか否
日本国憲法が揺らいでいる。憲法解釈を大きく変更した安保法が国会で成立し、自民党はさらに改憲を目指す。その根底にあるのが「押しつけ憲法論」だ。だが日本国憲法がこれまで70年間、この国の屋台骨として国民生活を営々と守り続けてきたのも事実である。この連載では戦後70年、日本国憲法が果たしてきた役割、その価値を改めて考えたい。 第1回は日本国憲法がひとりの女性を救った物語である。 栃木県某市。その地域のことをどう表現すればいいのか、戸惑う。ちょっとした幹線道路と小さな道路に区切られた一角に団地が建ち並ぶ。辺りには民家と田んぼしかない。表現の手掛かりになるような特徴がなく、ぬるっと手から滑り落ちそうなところ。そんな地域が、日本憲法史上に特筆される裁判の舞台となった。 裁判の名前を「尊属殺重罰事件」という。日本で初めて最高裁判所が法令違憲の判決を下した事件といわれている。 事件は47年前の1968(昭
しかし今、その“お家芸”は転機を迎えつつある。科学観測上の要求から衛星は大型化するが、予算は増えないからだ。「次のX線観測衛星は、目的を絞った小型のものになるだろう」と関係者は語る。 望遠鏡にとって“大きい=正義” 宇宙科学は、宇宙に衛星や探査機を打ち上げて、宇宙を探る営みだ。ざっくり、1)地球周辺宇宙環境の計測や惑星探査機のように目的地まで赴く、2)地上では大気に遮られて観測できない赤外線、紫外線、X線、ガンマ線などの電磁波で宇宙を調べる――の2つに分類することができる。どちらも、天文学の中の一部といっていいだろう。 さて、望遠鏡という道具には、大きければ大きいほど、より細かいところが観察できるようになり、より微弱な電磁波をとらえることができるという性質がある。望遠鏡にとって“大きいことは正義”なのだ。 1897年に米ウィスコンシン州ヤーキス天文台にレンズ口径1mの天体望遠鏡が設置された
清原和博・元プロ野球選手が2月2日、覚せい剤取締法違反の疑いで、現行犯逮捕された。世間に大きな衝撃を与えたこの事件。メディアによる報道はいまだ収まる気配にない。 法を犯したとはいえ、薬物依存はれっきとした精神疾患でもある。薬物依存者に対して懲罰的な発想が根強いが、果たしてそれで本質的な解決につながるのか。 薬物依存症研究の第一人者である、独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健医療研究所薬物依存研究部長の松本俊彦氏に、病の実態や横たわる課題の数々について尋ねた。 (聞き手は庄子 育子) 心が薬物にハイジャックされている状態 清原氏逮捕時の様子をあるテレビ局が独占的に捉えていましたが、薄着であるにもかかわらずかなり汗をかいているなど、少し異様な感じがしました。臨床的にはどんな状態であったと捉えられますか? 松本俊彦(まつもと・としひこ) 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究セン
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