過去を未来へ−ニコルソン・ベイカーの願い− 1 図書館の行方:情報化の光と影 情報化社会なるものの到来が語られ始めてすでに久しく,図書館の世界でも,随所でその影響が認められるようになってきた。図書館もまた,新しい情報技術や機器を導入し,情報提供機能を拡充させていくことで,情報化社会における自らの利用価値や存在意義を高めていこうとしているのである。 ところが,こうした図書館の姿勢に対しては,賛辞ばかりが寄せられてきたというわけでもない。中でも,アメリカの作家ニコルソン・ベイカー(Nicholson Baker)による一連の抗議活動は,同国の図書館内外に反響を呼び起こし,最近ではイギリス等にまでその余波が及んでいる(CA1436参照)。ベイカーは,急速にハイテク化を進めつつある今日の図書館に対し,強い警告を発しているのである。 この警告を、図書館の課題や発展を考えるための手がかりとしてのみ理解