――日立製作所は子会社に転出していた今年70歳をトップに起用し、 「時計の針を戻した」と評される。トヨタやスズキは創業家に大政奉還した。 経済危機下のトップ交代に「復古色」が漂うのはなぜなのか。―― ニッセイさん。茨城県日立市の人たちは親しみと尊敬の念をこめて言う。 日本生命の略称ではない。来年創業100周年を迎える日立製作所の「日」と「製」を音読みして、そう呼ぶ。 日立市は日立製作所の企業城下町である。街を南北に走るJR常磐線に沿って、要塞のような工場が点在している。いまは組織改編によって名称が変わったが、発電機を造る日立工場、変圧器の国分工場、制御機器の大みか工場、家電の多賀工場、さらに有力子会社の日立化成や日立電線の工場もある。人口の1割近い1万6000人がこれら工場群で働く。 ■「柵内」のエリートたち なかでも5000人が働く日立工場は、原子力や火力の発電機やタービンを造る