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ブックマーク / realsound.jp (62)

  • 宮藤官九郎×石井岳龍が生み出した荒唐無稽な愉悦感 『パンク侍、斬られて候』に映る私たちの姿

    町田康の荒唐無稽な時代小説を、クドカンがシナリオ化し、石井岳龍が監督する。製作者はアクの強いこの3人をよくぞ集めたものだ。そしてその3つの固有名詞が醸す期待からまったく外すことはない。主人公のパンク侍、掛十之進には、『シャニダールの花』『ソレダケ / that’s it』に次いでこれが石井岳龍作品3度目の起用となる綾野剛だが、このカメレオン俳優は『そこのみにて光輝く』のようなリアリズムであれ、今回のようにパンク侍であれ、なんでも大丈夫だ。舞台となる田舎の弱小藩の街道筋に綾野剛がふざけたコスチュームで現れて、物乞いの男を極悪新興宗教の一味と決めつけ、いきなり人殺しする。この冒頭だけでこの映画世界がどれだけねじ曲がっているのかを、誰でも理解できることだろう。物乞いの出血がそこまで天高く噴き出さなくてもと思うが、景気のいい血糊の飛沫は、虹でも発生しそうなほどだ。 しかしながら、この映画の荒唐無稽

    宮藤官九郎×石井岳龍が生み出した荒唐無稽な愉悦感 『パンク侍、斬られて候』に映る私たちの姿
  • 監督が運転するタクシー“ソン・ガンホ”に乗り光州事件を追体験 『タクシー運転手』の普遍的な希望

    『タクシー運転手 〜約束は海を越えて〜』(17年)は素晴らしい作品だと思う。作を手掛けたチャン・フン監督は、すでに『義兄弟 SECRET REUNION』(10年)『高地戦』(11年)といった快作を手掛けているが、ここにきてさらに進化し、新たな傑作を生みだした。 1980年5月の韓国。タクシー運転手を営むマンソプ(ソン・ガンホ)は、とある儲け話を耳にする。「ドイツ人をソウルから光州まで連れて行けば、大金がもらえるらしい」マンソプは困窮しており、幼い娘にも苦労をかけていた。こんなおいしい話はないと、ドイツ人のピーター(トーマス・クレッチマン)を連れ、鮮やかな緑のタクシーで光州へ向かう。しかし、政府が情報統制をかけていたため、マンソプは知らなかった。彼らが向かう光州は、民主化を求めるデモ隊と、それを鎮圧しようとする軍隊によって、戦場になっていることを。 作は「光州事件」という実際にあった歴

    監督が運転するタクシー“ソン・ガンホ”に乗り光州事件を追体験 『タクシー運転手』の普遍的な希望
  • 『火垂るの墓』『この世界の片隅に』は“反戦映画ではない”のか 高畑勲監督の発言などから検証

    『火垂るの墓』は“反戦映画ではない”のか 優れたアニメーション作品を作り続け、アニメ界や映画界に多大な功績を残した高畑勲監督。その代表作の一つが、作家・野坂昭如の短編小説映画化作品『火垂るの墓』だ。親を失った14歳の兄と4歳の妹が、戦時下に地域の共同体からはなれ、2人だけで困窮した生活を営み、死に向かって衰弱していくという内容が、映画の観客やTV放映時の視聴者に衝撃を与えた。その陰惨さに「二度と観られない」と語る人も少なくないほど、真に迫る作品である。 『火垂るの墓』が公開された1988年は、まだ日の敗戦から43年。野坂昭如が自身を基にした主人公の清太が、もし実在し命を落としていなければ、57、8歳だっただろう。当時はまだまだ戦時中の記憶を持った人々が大勢いた。しかし、野坂昭如も高畑監督も亡くなった現在、すでに敗戦から73年の月日が経っている。ここまでの間に日の状況も様変わりした。

    『火垂るの墓』『この世界の片隅に』は“反戦映画ではない”のか 高畑勲監督の発言などから検証
  • 「韓国の若い人たちの多くは、光州事件を深くは知らない」 『タクシー運転手』監督インタビュー

    1980年5月18日、韓国・光州市の全羅南道旧道庁前広場はまさに“戦場”と化していたーー。光州市で大学を封鎖した陸軍空挺部隊と、これに抗議した学生が衝突し、軍部隊・機動隊の鎮圧活動はエスカレート。これに対抗するため、市民はバスやタクシーを倒してバリケードを築き、角材や鉄パイプ、火炎瓶で応戦する。21日には、群集に対して空挺部隊の一斉射撃が開始。結果として死者155人、負傷者や拘束者など4634人もの犠牲が出た。韓国近代史上、最大の悲劇といわれる“光州事件”だ。 映画『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』は、光州事件の現場を取材して世界にその真実を伝えたドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーターと、彼をソウル市から光州市まで送迎したひとりのタクシー運転手キム・サボクの実話をもとにしたヒューマンドラマである。主演のタクシー運転手役を務めるのは、『シュリ』(99年)や『殺人の追憶』(03年)などの作

    「韓国の若い人たちの多くは、光州事件を深くは知らない」 『タクシー運転手』監督インタビュー
  • 菊地成孔の『ブラックパンサー』評:本作の持つ逸脱的な「異様さ」、そのパワーの源が、もしトラウマであり、タブーなのだとしたら

    菊地成孔の『ブラックパンサー』評:作の持つ逸脱的な「異様さ」、そのパワーの源が、もしトラウマであり、タブーなのだとしたら 批評掲載の経緯(比較的面白い) 「<シェイプ・オブ・ウォーター>評の閲覧数が多く、好評なんで、『ブラックパンサー』もお願いできませんか? アレ、観ました?」と言われたのだが、そりゃあ観たよ。と言うと「連載で、、、、お願い、、、、できますかね、、(笑)」と言われた。ハリウッド映画おっかねえなあ。好きで見てるのも連載の対象に成りうるもんねえ(笑)。「か、、、書きます」と言うしかないではないか。 ていうか『シェイプ』の閲覧数が多いってAAの主要賞とった今年の代表作なんだから、そんなの誰が書いたって閲覧数多いの当たり前なんじゃないの?と思いながら、原稿料欲しさに書くけれども(明言)、とにかく筆者は作を「そのつもり」では見てない。 プライヴェートで(つうかデートですよ。当たり

    菊地成孔の『ブラックパンサー』評:本作の持つ逸脱的な「異様さ」、そのパワーの源が、もしトラウマであり、タブーなのだとしたら
  • 菊地成孔の『シェイプ・オヴ・ウォーター』評:ヴァリネラビリティを反転し、萌えを普遍的な愛に昇華した、見事なまでの「オタクのレコンキスタ」は、本当にそれでいいのか?

    菊地成孔の『シェイプ・オヴ・ウォーター』評:ヴァリネラビリティを反転し、萌えを普遍的な愛に昇華した、見事なまでの「オタクのレコンキスタ」は、当にそれでいいのか? オタクに市民権を!(いつの叫びだ) 特に監督と音楽が際立って素晴らしい作は、ゴールデングローブ(以下GGA)と米国アカデミー(以下AA)の双方に於いて綺麗なまでに監督賞と作曲賞を受賞しているが(両賞が映画における最高権威とは全く思わないが(菊地成孔の『スリー・ビルボード』評:脱ハリウッドとしての劇作。という系譜の最新作 「関係国の人間が描く合衆国」というスタイルは定着するか?)、北米における映画産業内政治、並びに、それでも動かすことができない、政治力を超えた力のあり方を明確に示す、という点に於いて、合衆国観察という点で重要な2トップであることは間違いない)、アレクサンドル・デスプラ(56歳)が、現代の超ミッシェル・ルグラン(8

    菊地成孔の『シェイプ・オヴ・ウォーター』評:ヴァリネラビリティを反転し、萌えを普遍的な愛に昇華した、見事なまでの「オタクのレコンキスタ」は、本当にそれでいいのか?
  • 韓国ではなぜ権力を映画で描くのか? 『ザ・メイヤー 特別市民』が映し出す、政治の世界の欲望

    昨年の今頃は、『哭声/コクソン』、『アシュラ』、『お嬢さん』と韓国映画が次々と公開され話題となった。その後も『新感染 ファイナル・エクスプレス』のヒットもあり、韓国映画に期待するファンの数も増えたのではないだろうか。今年も『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』や『ザ・キング』など、韓国映画が続々と公開されるが、今年は、政治や権力を絡めて描いた作品が多いというのも特徴だ。 今回紹介する『ザ・メイヤー 特別市民』は、その中でも政治の世界を直球で描いた作品である。物語の主人公は、ソウルの市長を二期務め、三期目の再選を目指し、ゆくゆくは大統領になろうとするビョン・ジョングだ。 彼は、映画の冒頭、若者との対話のためのイベントでラップを披露したり、検索で1位になる動画制作をスタッフに命じたりと、有権者へのイメージを巧みに操り、政治をショーと考えているような人物。その若者とのイベントの場で鋭い質問を

    韓国ではなぜ権力を映画で描くのか? 『ザ・メイヤー 特別市民』が映し出す、政治の世界の欲望
  • 菊地成孔の『スリー・ビルボード』評:脱ハリウッドとしての劇作。という系譜の最新作 「関係国の人間が描く合衆国」というスタイルは定着するか?

    菊地成孔の『スリー・ビルボード』評:脱ハリウッドとしての劇作。という系譜の最新作 「関係国の人間が描く合衆国」というスタイルは定着するか? 「菊地成孔の欧米休憩タイム~アルファヴェットを使わない映画批評~」に次ぐ菊地成孔映画批評連載「菊地成孔映画関税撤廃」は、タイトルにある通りこれまでと一転、あらゆる言語を使ったあらゆる国家の、ハリウッド級からギリ自主映画まで、それが映画であればシネコンから百人未満の上映会まで、百鬼夜行の獣道を徒手空拳、「結局、普通の映画評フォームなんじゃないの?」という当然の声も耳に指を突っ込んで突き進む驚異の新連載! 「合衆国の関係国」なんて言ったら、世界中の全部の国じゃね? とネットの口調で言われそうだ。ここでは、ここ数年の映画界の流れとして、第一関係国としての英国、第二関係国としての中南米諸国を仮設する。「英国人が描くアメリカ南部」という意味に於いて、作は、

    菊地成孔の『スリー・ビルボード』評:脱ハリウッドとしての劇作。という系譜の最新作 「関係国の人間が描く合衆国」というスタイルは定着するか?
  • 物事の二面性と中間性を体現する『スリー・ビルボード』の衝撃

    「なんだ、これは…」『スリー・ビルボード』を鑑賞中に、思わず何度もつぶやいてしまった。予想を裏切り続ける衝撃的な展開の連続に、この映画を観ている間じゅう呆気にとられるのだ。このように、多くの観客に新鮮な驚きを与え、アメリカ国内外で多数の賞を受賞し、アカデミー賞有力候補にもなった作、『スリー・ビルボード』が与える衝撃がどこからくるのか、ここではその理由をできるだけ深く考察していきたい。 物語の始まりは、むしろシンプルで地味過ぎるほどだ。アメリカ、ミズーリ州の田舎町で、自分の娘を何者かにむごたらしく殺害された女性ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)が、進展を見せない地元警察の捜査に苛立ちを感じ、車が通る道に3枚の大きな広告看板(スリー・ビルボード)を出した。その内容は、事件を未だ解決できていない警察署長を名指しで批判するというものだった。そのウィロビー署長(ウディ・ハレルソン)は、ミル

    物事の二面性と中間性を体現する『スリー・ビルボード』の衝撃
  • 『スリー・ビルボード』が描く、善悪混淆と人間の多面性

    ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)の深いしわが刻まれたその顔は、砂漠のようにカラカラに乾いている。その乾きは、もはや感傷的な涙などではたやすく潤うことを許さない。愛娘を殺され、難航する捜査に対する憤りを鎮火させることのできない母親ミルドレッドは、町の辺ぴな場所に建てられた3つの看板にウィロビー署長(ウディ・ハレルソン)へ向けた広告を出す。その広告を巡り、ミルドレッド、ウィロビー、ディクソン(サム・ロックウェル)の3人が群像劇を繰り広げるのが作『スリー・ビルボード』である。 映画の冒頭でミルドレッドが見つめる先にある、その寂れた広告に残された“Your life”の文字が告げるように、この物語は彼らの物語でもあると同時に、“あなたの人生”の物語そのものである。ミズーリ州のエビングという田舎町、それ自体は架空の町であるが、そこで描かれる世界は私たち観客の住む世界と相違ないだろう。なぜ

    『スリー・ビルボード』が描く、善悪混淆と人間の多面性
  • TWICE「Candy Pop」アニメMV制作秘話を京極尚彦監督が語る 「彼女たちに“ないもの”をあえて表現した」

    アジア発の9人組ガールズグループ、TWICEの最新シングル『Candy Pop』がリリースされた。この楽曲は、大切な人への気持ちを歌った、バレンタインの季節にぴったりのラブソングだ。そしてMVでは、『ラブライブ!』を筆頭にした人気アニメの監督として知られる京極尚彦監督と韓国の実写撮影チームが集結。アニメ表現と実写表現を巧みに融合させた映像の中で、TWICEメンバーがTVのスクリーンに映されたアニメの世界から現実へと飛び出して、落ち込んでいる女の子を励ましにいく様子が描かれている。日を含むアジアの3つの国と地域から選抜されたTWICEというグループの成り立ち同様、各国のクリエイターによる魅力的なコラボレーションの場となった今回のMV制作について、京極尚彦監督に聞いた。(杉山 仁) 「TWICEは“みんなに元気を与える存在”」 ――「Candy Pop」のMVはTWICEチームから京極さんに

    TWICE「Candy Pop」アニメMV制作秘話を京極尚彦監督が語る 「彼女たちに“ないもの”をあえて表現した」
  • 『バーフバリ 王の凱旋』は歴史に残る娯楽超大作だーー黒澤明やジョージ・ルーカスの精神を受け継ぐ

    映画大国インドで歴代興行収入1位に輝き、さらに全米で週末興行成績3位を獲得するという大快挙を達成したインド映画、『バーフバリ 王の凱旋』。作は、通称「ボリウッド」とよばれるムンバイ(ボンベイ)のヒンディー語映画ではなく、南インドのテルグ語、タミル語映画であり、インド映画の懐の深さを物語っている。 実際に作を鑑賞すると、その前評判の高さをはるかに凌駕する、あまりにも激烈な面白さに驚愕してしまう。娯楽の王道も王道、いや、それを超えて、もはや“天道”を往く作品だ。興収データはもちろんだが、これはむしろ、内容の面で歴史に残るべき傑作である。まだ作を見ていないのならば、すぐさま劇場に駆け込んでほしい。趣味趣向が多様化する現代において、ここまで年代性別問わず多くの観客が楽しめ、それでいて一つ一つの表現が極度に洗練されている明快な娯楽作品は、近年なかったのではないだろうか。 音楽や舞踊に始まるイン

    『バーフバリ 王の凱旋』は歴史に残る娯楽超大作だーー黒澤明やジョージ・ルーカスの精神を受け継ぐ
    synonymous
    synonymous 2018/01/14
    小野寺系だが仕方がない
  • ジャッキー・チェンは西洋と東洋の価値観を結び付けるーー『カンフー・ヨガ』が優れた作品となった理由

    世紀のアクションスター、ジャッキー・チェン。これまでスクリーンのなかで、「限界に挑む危険なスタントアクション」、「オリエンタルなカンフーアクション」、「アイディア満載の喜劇的なアクション」など、多様な輝きを放ち、圧倒的な人気を勝ち得てきた。 自ら危険な撮影に挑んできた、同じく世界的なアクションスターである、ジェット・リーやドニー・イェンらもそうであるように、長年の危険な撮影における蓄積した負傷や肉体の酷使によって、ジャッキーは満身創痍の状態にあるという。慢性的な身体の痛み、加齢。限界を悟ったジャッキーは、ロバート・デ・ニーロのような演技派への転向を目指しているというが、やはり観客の多くが期待してしまうのはアクションである。人のサービス精神もあって、声優を務めた『レゴ ニンジャゴー ザ・ムービー』の短い実写パートでの出演ですら、軽くアクションを披露しているほどだ。 そういったなかで、ジャッ

    ジャッキー・チェンは西洋と東洋の価値観を結び付けるーー『カンフー・ヨガ』が優れた作品となった理由
  • 映画作家・北野武の集大成ーー『アウトレイジ 最終章』がもたらす贅沢な時間

    104分という上映時間が予期させたように、『アウトレイジ 最終章』は簡潔にしてきわめて純度の高い圧倒的な傑作になった。冒頭の晴れた海と白っぽい坂道、質の良い白いシャツにサングラスの監督人と、釣糸を垂れる洒落たチンピラシャツの大森南朋のいる桟橋のシーンから、艶やかな夜の街に車を走らせるシーンへと変わるオープニングのシークエンスは、それだけで早くもこの映画全体にわたる場面転換のあざやかさと、惜しむことなくふんだんに詰め込まれた映画ならではの魅力を観客にいっきに伝え、期待と喜びで胸を一杯にする。 『アウトレイジ 最終章』は、シリーズの一とはいえこれだけでまちがいなく完結した作品だ。人物の背景やそれぞれの関係はここだけで律儀に丁寧にセリフを介して説明されているし、たとえ前二作を見ていなくともまったく問題はない。だが、約30年に及ぶ監督としてのキャリアの中で、18もの長編を撮ってきた北野武の映

    映画作家・北野武の集大成ーー『アウトレイジ 最終章』がもたらす贅沢な時間
  • 『HiGH&LOW THE MOVIE 2』評論家座談会【前編】 「日本発クリエイティブの底力を見た!」

    『HiGH&LOW THE MOVIE 2』評論家座談会【前編】 「日発クリエイティブの底力を見た!」 EXILE HIROが企画・プロデュースを務めた『HiGH&LOW THE MOVIE 2/END OF SKY』が、現在公開されている。同作は、リアルとファンタジーがコラボした世界観で、映画、ドラマ、動画配信、コミック、SNS、アルバム、ライブなど、あらゆるメディアを巻き込んだ総合エンタテインメント・プロジェクト『HiGH&LOW』シリーズの最新作で、先日は早くも次回作にして最終章となる『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』のポスタービジュアルも発表されたばかりだ。 これまでの日映画の常識を打ち破るスケールに、多くの識者らも驚嘆の声を挙げている同シリーズ。一体どんなところがすごいのか、リアルサウンド映画部でも執筆中のドラマ評論家の成馬零一氏、女

    『HiGH&LOW THE MOVIE 2』評論家座談会【前編】 「日本発クリエイティブの底力を見た!」
  • なぜ真の女性ヒーロー映画が登場するまで40年かかったのか? 『ワンダーウーマン』の画期性

    ついに、ついに、真の女性ヒーロー映画が誕生した。 ここまで長かった。1978年の『スーパーマン』から数えればヒーロー映画歴史は今年で40年。その間、女性ヒーロー映画はずっと暗黒の歴史だった。1984年の『スーパーガール』は評価、興行とも散々。2004年の『キャットウーマン』はラジー賞。何よりの驚きは、これだけアメコミ映画が隆盛を極める中で、女性ヒーロー映画にはこの2作の大失敗くらいしか振り返るべき歴史がない、ということだ。そもそも制作すらされていないのだ。 『ワンダーウーマン』だって例外じゃなかった。2000年ころから噂レベルでは映像化の話はあっても実現まで行き着かない。唯一、形になったのは2011年のTVシリーズのパイロット版1話のみ。しかも、出来が酷いということで放映すらされなかった。 というような歴史を踏まえれば、今回の映画『ワンダーウーマン』がアメリカで今夏最大のヒット、歴代興行

    なぜ真の女性ヒーロー映画が登場するまで40年かかったのか? 『ワンダーウーマン』の画期性
    synonymous
    synonymous 2017/09/08
    「『ワンダーウーマン』の画期性は、極論すれば、「ノーマンズランド」のあの絵面を最高に格好良い、感動的な場面として描くことに成功した、という点に集約されると言っていいと思う。」
  • 青春アニメ、なぜ地方の町ばかり舞台に? 『打ち上げ花火~』の独自性に迫る

    1993年にTVドラマの1エピソードとして放映された岩井俊二監督の同名の人気作品を、24年経ってアニメ映画化した『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』。『君の名は。』を大ヒットに導いた川村元気プロデューサー、脚のみの仕事に初挑戦した、映画監督・映像ディレクターの大根仁、そして『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズの監督・新房昭之らが、原作の要素から新たに内容を解釈し直した作品だ。 花火という要素を中心に、ある少女に惹かれていく少年の夏の一日を描いた作を観ながら、ぼんやりと意識にのぼっていたのは、このように田舎の町を舞台に、学生の青春を映し出した光景を、劇場アニメのなかで最近何度見ただろうかということだった。『夜明け告げるルーのうた』、『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』、『聲の形』など、地方の中高生の物語が相次いで描かれている。もちろんこれらの作品は、新海誠監督の『君の名は。』が

    青春アニメ、なぜ地方の町ばかり舞台に? 『打ち上げ花火~』の独自性に迫る
  • 実写をアニメ化する試みは成功したのか? モルモット吉田の『打ち上げ花火~』評

    あらゆる映画が再生産される時代になると、オリジナルへの思い入れなど、初めて観る観客にとっては何の意味もなさなくなる。『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(以下『打ち上げ花火』)が、岩井俊二監督によるオリジナルの実写版と、今回リメイクされたアニメ版でどちらが優れているかといった比較は、大多数の観客にとっては、劇中の台詞を引用すれば、「花火なんて丸くても平べったくてもどっちでもいいじゃん」みたいなものかも知れない。とはいえ、アニメ版がオリジナル版を丁寧になぞった上で新たな物語を付け加えているだけに無視するわけにはいかない。どう脚色され、それが実写からアニメに越境する上でどう効果を挙げたのかという視点から眺めてみることにする。 最初にことわっておくと、筆者はモロにオリジナル版側の観客である。これは24年前、『ifもしも #15 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(来、#15

    実写をアニメ化する試みは成功したのか? モルモット吉田の『打ち上げ花火~』評
  • 『打ち上げ花火~』岩井俊二×大根仁×シャフトの組み合わせは本当に噛み合っていないのか?

    異色の組み合わせは噛み合っていたのか 『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』がなにやら随分と評判が悪い。わかりやすい魅力のある作品では決してないだろうが、ここまで反発があるとは予想していなかった。世相に反して筆者は今作が大好きで、すでに3回観た。あと何回観に行くだろうか。観返す度に発見がある。鑑賞を重ねる毎に感動も増している。 不評の原因はなんだろうかと、いろいろ聞いたり検索してみたりしているのだが、原作のTVドラマを知っている者は、オリジナルとの乖離部分に困惑し、大根監督ファンからは、らしくなさを指摘され、シャフトのファンも、『魔法少女まどか☆マギカ』の二番煎じではないか、そもそも意味がよくわからないなどなど、微妙な評価を受けている。 要するにこの座組みが噛み合っていないと感じられているようだ。岩井俊二の清冽な描写と、大根監督のイヤらしい視線、スタイリッシュなシャフトの描写が、そ

    『打ち上げ花火~』岩井俊二×大根仁×シャフトの組み合わせは本当に噛み合っていないのか?
  • 日本のアニメは世界でどう評価? 『夜明け告げるルーのうた』アヌシー映画祭最高賞受賞から考察

    世界最大規模、最古の歴史を誇る、フランスの「アヌシー国際アニメーション映画祭」。このほど、湯浅政明監督の『夜明け告げるルーのうた』が、その長編部門最高賞となる「クリスタル賞」を受賞した。日作品の長編部門最高賞は、1995年の高畑勲監督による『平成狸合戦ぽんぽこ』の受賞以来、22年ぶりの快挙である。また、片渕須直監督の『この世界の片隅に』が同部門の審査員賞を受賞しており、2017年は日のアニメーション映画海外で大きな注目を集める年になったといえるだろう。 この結果に対して、疑問を感じる人もいるかもしれない。まず、「アニメ大国」といわれる日の長編作品が、何故この長い間、長編最高賞の受賞を逃していたのか。そして、国内で客足が伸びず、ほとんどの劇場が早々に上映を打ち切った『夜明け告げるルーのうた』が、何故ここまで高い評価を得たのかという点である。ここでは、その謎を解明しつつ、同時に日のア

    日本のアニメは世界でどう評価? 『夜明け告げるルーのうた』アヌシー映画祭最高賞受賞から考察