モラル・エコノミー(moral economy, 道徳経済)とは、経済的な行為や行動を支えている論理の中に人々 の道徳的なもの(倫理)がある場合、そのような原理で動く経済活動や実践のことをいう。 モラル・エコノミーは、1970年代後半に、政治経済(political economy)と対峙して論争になったことがある。後者(=ポリティカル・エコノミー)の立場は、経済的な行為や行動を支えている中核に人間の合理的な 計算や打算——典型的発想としては最小の投資で最大の利潤を引き出すこと——を見いだす立場であり、今日の政治経済の基本的な枠組みに立脚するものである (経済人類学における<実体論>対<形式論>の論争の後者に相当する)。 今日的な意味での、モラル・エコノミーの概念を最初に主張したのはE.P.トムスン(Thompson[1971])である。彼=トムスンは、19世 紀の英国の民衆暴動において、