由良ゼミの真骨頂は、90分の公式的なゼミが終わり、由良君美が個人研究室に引き上げてから、本格的に開始された。アルバイトやデートの約束がなくて、もっとぼくと話したい人は、紅茶を出すからいらっしゃいと、彼はわたしたちを招いた。……由良君美は学生たちのために紅茶を入れ、自分の分にはたっぷりとオールドパアを入れると、尋ねてくるのだった。ところで最近の収穫は何かね? 何か新しい発見があったかね? 研究室に招かれた全員がその一週間のうちに読んだ書物や観たフィルム、足を向けた展覧会について報告めいたことをいうと、由良君美はたちどころにそれに註釈を与え、そこから始まって即興的な、第二の講義が開始されるのだった。ブレイクからエリアス・カネッティへ、ネオプラトニズムからクセナキスへ、またデュシャン・マカベイエフから吉田喜重へと、話題は自在に飛躍した。きみ、それについてはあれを読みたまえ。うーん、その考え方はす