第16回:みつばちの大地最近、世界中で「ミツバチが消えて行く」というのがたいへんな問題になっている。在来種の50パーセントから90パーセントが消滅したとか、恐ろしい数字が出ている。この現象には「蜂群崩壊症候群」というおどろおどろしい名称までつけられている。イギリスでは、乗組員がいなくなって幽霊船になった19世紀の奇怪な事件にちなんで「メアリー・セレスト号現象」と呼んでるのだとか。 ミツバチの生態の面白さを描いた、良質な科学ドキュメンタリ原因は寄生虫病とか農薬とか、移動のストレスとかさまざまなことが言われているが、はっきりしていない。本作でも、こうした要素が重なりあって起きているのだろうと推測するだけで、明快な答を出しているわけじゃない。 でもこの映画は、ミツバチの消滅を「現代社会が悪いのだ」「地球が死んでいく」などと声高に批判するような内容ではない。そういう大声はときに人を不快にしてしまう