29歳になるシェリル・ディンゲス軍曹は米国陸軍で近接戦闘の訓練を担当している。ミズーリ州セントルイス出身のディンゲスは、4段階ある戦闘訓練レベルで「レベル2」を教える資格を有する、陸軍でも数少ない女性兵士の一人だ。レベル2とは、同時に二人の襲撃者を相手に戦うことができる段階を指す。 ブラジリアン柔術の修業を積み、戦場から生還するすべを身に付けたディンゲスだが、これから先もっと過酷な闘いを強いられることになるかもしれない。彼女は「致死性家族性不眠症」の遺伝子を受け継ぐ家系の出身なのだ。この病気の主な症状は眠れなくなること。まず昼寝ができなくなり、やがて夜間の睡眠が途切れ、ついには全く眠れなくなる。通常は50歳代で発症し、発症後1年ほどで、病名が示す通り、死に至る。ディンゲスは、発症の可能性を診断する遺伝子検査を拒否している。「病気の遺伝子があることが分かったら、頑張る気力をなくしそうで心配な