原雅明氏の新刊『音楽から解き放たれるために──21世紀のサウンド・リサイクル』はまず、現在の音楽の現場におけるミュージシャンとリスナーとの信頼関係に分け入るどうしようもない亀裂から話題をスタートさせる。2000年代にダウンロードや制作側のテクノロジーの進化により起こった音楽を取り巻く状況の変化やパーティーの変容。原氏は雑誌への寄稿やフロアやショップからのダイレクトなレポートを通してインディペンデントであることの難しさや、マーケット優先のシーンへの警鐘、そして地下層での新しい音が生まれる予兆を決して悲観的でなく捉え続けてきた。折りに触れ音楽についての文章を書くことの難しさを吐露しながら、時にはそこで紹介されるCD以上に雄弁に音楽の楽しさと可能性を伝える彼の筆致は、冷徹な分析そして膨大かつ体系的な知識をおしげもなく盛り込みながら、決してマニアックに閉じようとしない。本著でも一般的に原氏の得意分