小黒 一正 法政大学経済学部教授 1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。 この著者の記事を見る
2011年02月18日23:44 カテゴリ経済 財政危機のいつか来た道 菅内閣は「首相のクビと引き替えに予算を通してくれ」という話も出る政権末期だ。こんな内閣に財政再建ができるはずもないが、首相の首をすげかえても展望がないのは同じだ。こういうふうに果てしなく問題が先送りされる状況をみていると、1992年に不良債権の番組の取材をしていたころを思い出す。 当時、危ないといわれていた日住金が「当社は倒産状態」と書いた衝撃的な秘密報告書を出し、業界で流通していた。1兆円の債務超過という絶体絶命で、存続会社と清算会社をわけて清算する案をメインバンクが提案したが、大蔵省(寺村銀行局長)が握りつぶした。それが国会で表面化したのは4年後で、住専のメインだった長信銀がすべて消滅したのは10年後だった。 そのころ日本の銀行はすべて実質的に債務超過で、支払い能力(solvency)がないことは明らかだったが、取
というような扇情的なことを書くな、という指摘を間接的にいただいた。財政破綻は必至だと私は思っているが、それが扇情的だとは思わない。なぜなら、破綻は必至だが、狭い意味での財政破綻は結局起きないだろうし、財政破綻するかどうか自体は意味のない問題設定だからだ。 財政破綻の定義を、政府が支払いに滞り、公務員の給与支払いや支払いが行われなくなる、ということに限るのであれば、それは日本の場合には起こりにくいだろう。 その理由は、表面利率が現時点で低いことである。現在の国債利率は10年物で、1.2%程度だが、これが暴落して、一気に2%上がって3%となったとしても、1年間の国債発行高は借り換えも含めて150兆程度だから、最大でも利払いの増加額は3兆円だ。3兆円の利払い増加で、政府の資金調達がいきなり詰まることはなく、その意味では、普通の国債暴落では政府は破綻しない。 ここで、破綻にならない理由は、表面利率
財政危機についての議論ということだが、どこが危機?というのが私の意見だ。 日本政府の財政は、危機ではなくすでに実質破綻している。今後数年で破綻確実ならだ、それは実質破綻と言っていいだろう。 実質破綻の理由は、シンプル。マクロ的には、政府の負債が合計1000兆円に届こうとしている。いくら金融資産が国内に豊富だと言っても無限ではないから、いつかは破綻する。だから、黒字を出して借金を減らすと言う場面がない限り、破綻は免れない。 一方、黒字を出して、借金を減らすことができるかというと、これは可能性は限りなくゼロに近いだろう。なぜなら、昭和40年に国債を発行して以来、あのバブル期であっても、借金を減らしたことがない国であり、そういう政府なのだ。 あのバブル期ですら借金を減らせなかったのだから、今後も二度と借金は減らせないだろう。借金を減らすためには経済成長というが、経済成長による税収増加による借金返
財務省が11月10日に発表した政府債務(国債や借入金などを合わせた国の借金)は、9月末で908兆8617億円となり、過去最高を更新した。 GDP比は173%と先進国で最悪だが、長期金利は1%前後と低く、国債は順調に消化されている。 こういう状況を根拠にして「財政危機というのは財務省の世論操作だ」とか「実は日本の財政は大丈夫だ」いう類の話が根強くあるが、それは本当だろうか。 ここでは多くの財政学者の意見をもとにして、財政危機の実態について一問一答で考えてみよう。 <1> 国債は国民の資産だから問題ない? 「国債は国民の債務であると同時に資産だから、夫が妻から借金するようなもの。家計としてはプラスマイナスゼロだから問題ない」という素朴な議論があるが、妻からの借金なら返さなくてもいいのだろうか。 例えば夫が飲んだくれで仕事をしないで、妻がパートで稼いだ貯金100万円を借りるとしよう。これで夫が酒
(2010年11月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) アイルランドには同情する。アイルランド政府は2008年9月以降、金融危機と戦うために素晴らしく大胆な対策を繰り返し明らかにしてきた。まず、銀行を保証すると申し出た。次に、規制当局のトップと中央銀行の総裁を交代させ、問題銀行に透明性を持ち込むための異例の強硬措置に乗り出した。 さらに注目すべき動きとして、債務を削減するために厳しい緊縮財政計画も課した。緊縮財政はこれまでのところ、長く苦しんできた有権者に概ね受け入れられてきた。社会的な結束はまだ驚くほど高いように見える。 市場に報われない改革努力、「ギリシャよりひどい」の声も だが、こうした努力が市場に報いられる代わりに、アイルランドは今、市場の標的になっている。 同国の10年物国債の利回りは先日、8%を超えるまで急上昇した。ニューヨークのような場所にあるヘッジファンドは、将来のデフ
(英エコノミスト誌 2010年8月14日号) 緊縮財政か、刺激策か? 経済学者の中には、それ以上に極端な見解を抱く人もいる。 大方の人の基準からして、英国財務相のジョージ・オズボーン氏(39歳)は財政タカ派だろう。同氏は今年6月に発表した初の予算案で、何らたじろぐことなく増税と歳出カットを約束した。その結果、英国の純額ベースの公的債務は2014年3月にGDP(国内総生産)比70%前後でピークをつけ、減少に転じる見込みだ。 シンクタンクの財政研究所(IFS)によれば、オズボーン氏の歳出計画は、英国が1976年に国際通貨基金(IMF)に課せられた緊縮財政よりも厳しいものだ。 だが、一部のエコノミストが必要だと考える厳格な措置と比べると、オズボーン氏の取り組みは甘く見える。例えばフライブルク大学のクリスティアン・ハギスト氏率いるチームは、英国の財政状況は公式統計が示すよりもずっと悪いと考えている
その1 経済が成長すれば日本の財政赤字は改善する 経済が成長する、つまり、GDPが大きくなっていけば、国の税収はたいだいGDPに税率をかけたものなので税収も増える。一方で医療や年金などの社会保障費はGDPが増えてもいっしょに増えるわけではない。よって経済成長できれば日本の財政赤字は改善すると思われている。実際に小泉政権のときは改善していた。 しかし、国の借金、つまり国債は満期が来たらどんどん借り換えていかなければいけない。この時に金利が上がってしまったら国が負担する利息が増える。経済成長率が高まれば金利は当然上がっていく。日本のように政府が莫大な借金を抱えていると、ちょっと金利が上がっただけで支払い利息もものすごく増える。この時、経済成長率と(長期)金利で、成長率の方が金利より高くなる保証は実は何も無い。成長率>金利が続けば確かに財政赤字は改善されていくが、成長率<金利だと財政赤字は悪化す
菅首相の「最小不幸社会の実現を目指す」と言う所信表明を聞いて、「できないものねだり」はおやめなさいと言うスウエーデン財務相の言葉が頭をよぎりました。 ギリシャに始まり、ポルトガル、スペインと飛び火した南欧の金融不安の火の手は、ハンガリーなどにも広がり、欧州全体が揺れています。 ギリシャ、ポルトガル、スペイン3国は、南欧と言う地理的な共通点だけでなく、左派政権の下で永年に亘り「高福祉、低負担政策」を進めて来たことでも共通でした。 その間、高福祉社会で有名なスウェーデンは、政府、労働組合、企業が密接に協力しあい、高福祉の原資としてGDPの50%近い税金を賦課する類いまれな高福祉、高負担の国家を形成していました。 1980年代のスウェーデンでは、土地と金融のバブル景気に湧き、そのバブルが破裂した1990年から1993年にかけては、GDPが5%近く、総雇用数は10%も下落する深刻な状況に直面しまし
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