タイトル戦なら羽生有利 「負けました」 そうつぶやくと、彼は宙を仰ぎ、何度も目をしばたたかせた――。 2月17日12時30分。第11回朝日杯将棋オープン戦・準決勝で、羽生善治竜王が藤井聡太五段に屈した瞬間である。 対局後、羽生は「ずっと難しい局面だった。リードを許してからは、追いつくのは難しかった」とコメント。対局中、スクリーンには顔をしかめ、指を震わせる姿が度々映し出された。 その後、藤井は決勝戦で広瀬章人八段を破って、15歳6ヵ月での棋戦最年少優勝を飾り、六段に昇段。都内では快挙を伝える号外が配られた。 昨年、流行語となった「藤井フィーバー」は今年も続き、将棋界はさらなる盛り上がりを見せている。ただ、往年のファンは一抹の寂しさも感じたのではないだろうか。 羽生善治といえば棋界の第一人者。史上3人目の中学生棋士としてデビューし、'96年、25歳の若さで、7つあるタイトルをすべて獲得する前