どうも世の中の確率微分方程式の入門はハイブロウすぎると思う。経済学のいくつかの講義ノートを見たけど、ボレル集合族とか確率空間とか伊藤積分とかはやりすぎ。そういうのは微分を学ぶのにいきなりε-δ論法から入門するみたいなものだ[1]。物理屋風の方法論なら以下のように簡単に伊藤の補題も導きだされる。きちんとしたのはその後でよい。 さて、確率微分方程式とは連続時間でランダムな擾乱を受ける系を記述する微分方程式である。 例えばブラウン運動を考えてみよう。ブラウン運動では粒子はランダムに動く。そして試行をくり返せばその統計集団は正規分布に従う。そして分布の標準偏差は時間tの時には √t に比例する。これがブラウン運動の基本的な性質である。 ブラウン運動を微視的に見れば、それぞれの微小時間Δtごとに大きさ b √Δtの正規分布に従う動きをしている。一般の微分方程式であればΔtのあいだの粒子の動きΔXは、