工芸家のルネ・ラリックが生み出した香水瓶には「ティアラ形」と呼ばれるものがある。これは瓶本体ではなくストッパー(栓)をデザインの中心としたものだ。このデザインにより、それまでは脇役として機能していた栓の価値が高まった。この「香水瓶の栓」のように、テクノロジーなどの物を取り巻く要素に大きな変化が生じるとき、今まで価値を認められていなかったものや、価値の中心ではなかったものに注目し、それをうまく使いこなす人が出てくる。人工知能、分散型台帳技術、仮想現実技術といった今日的なテクノロジーにとっての「瓶の栓」はなんだろう。 両立しがたい要素を、工夫と情熱で両立させる話が大好きだ。「工夫」の一つである新しいテクノロジーを生かすため、デザインやビジネスモデル、製法や資金調達などに関する工夫を組み合わせる事例には胸が熱くなる。 20世紀前半に活躍した工芸家ルネ・ラリックの生涯は、そんな工夫に満ちていた。北