1995年に出版された「イギリス 繁栄のあとさき」が、3月に文庫にされていた。英国史が専門の歴史家によるエッセイ集で、生産、商業、金融で圧倒的な力を持つヘゲモニー国家としての英国を歴史研究の紹介を通して論じつつ、日本の状況を簡単に論じている。問題を感じる議論も無いわけではないのだが、18世紀から19世紀の英国の社会事情が色々と紹介されており読み物として面白いし、19年経った今でも論じられている日本の社会問題が残っているところも興味深い。また、21のエッセイが収録されているが、それぞれの完結度が高いので読みやすい。 日本の問題はさておき、英国史における議論は次の一点が中心になる。つまり、産業革命が英国をヘゲモニー国家にしたのではなく、植民地支配による商業資本の発達が英国をヘゲモニー国家にして産業革命を可能したと言うものだ。英国がフランスとの戦争に勝ち続けられたのは、工業力の差があったからでは
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