以前太平洋戦争の日本人捕虜の手記を読んだとき、イギリス人将校の手伝いで日本刀の鑑定をした話が書かれていた。東南アジアでイギリス軍の捕虜になった筆者は、ある時日本刀が好きだというイギリス人将校の前に呼ばれ、一振りの日本刀の真贋を鑑定しろと言われる。彼が日本刀の鑑定ができると聞いて将校が呼んだのだ。 名のある刀が本物か偽物か、彼は手にとって振ってみて偽物だと告げる。それは試験だった。将校はそのことを知っていてテストしたのだった。信用を得た彼は、将校が日本刀を入手するたびに鑑定に立ち会わされたが、代わりにに重労働は一切免除された。 どうして偽物だと分かったのかと後に聞かれて、振ったときのバランスが良くなかったと答えている。 このエピソードは私の義父を思い出させる。義父も旧家の知人から日本刀を見てほしいと依頼される。義父は専門家ではないが若い頃から日本刀が好きで、教師の傍らあちこちへ出かけたくさん