湊かなえさん作でタイトルが「山女日記」なら、「一緒に登山した女性たちの中の1人が事件に巻き込まれ、残った人間は罪悪感と猜疑心にさいなまれ、やがて狂気に」といったサスペンス風の話かと思いきや、本作では恐ろしい事件は何も起こりません。 恋愛や結婚や人間関係や仕事について、人の言葉に傷つき、姉妹や知人に劣等感を持ち、漠然とした苛立ちを感じる。 この短編集では、そんな20代から40代のいわゆる「オトナ女子」なら共感できる悩みを持つ人物が、数多く出てきます。 その女性たちが、登山で美しい風景に触れ、トラブルに遭遇し、同行者との人間関係に悩み、登り切った達成感にひたる。 その過程で自分を見つめ直し、普段は言えなかったことも口に出し、時には同行者と喧嘩しながらも、最後は前向きな気持ちになる。 いわばオトナの自分探しの物語です。 この作者は女性の言動や気持ちを描くのがうまく、特に会社の同期3人組でのお互い