そう。彼はピッチを離れたこの場所で、最後まで「責務」を果たしていた。 サッカー選手・阿部勇樹、最後のミッション。その始まりは、4年前の冬だった。 阿部とオシム、久々の再会を果たしたのちに 2017年12月25日、午後8時。 成田空港第2ターミナルに、1機の旅客機が到着した。90番台の到着スポットは、入国ゲートまでかなり距離がある。長いフライトの疲れもあって、乗客たちは長い通路をフラフラと歩いていた。その間を縫うように、早足で歩く人影がひとつ。 上下黒のスウェット姿。異様なまでに膨れ上がった太ももが、足を進めるたびにリズミカルに収縮している。 阿部、当時36歳。 恩師イビチャ・オシムさんを訪ねた長旅から帰ってきたところだった。 入国手続を終え、到着ロビーに歩み出る。ドーハ国際空港での乗り継ぎで、9時間待たされたこともある。サラエボを出てからすでに、26時間がたっていた。傍らで同行者たちが、ホ