大ヒット中の映画『告白』(湊かなえ原作、中島哲也監督・脚本)は、“志”あるものとして世界に認められるであろうか 大西 赤人 湊かなえによるデビュー作『告白』(双葉社)に関して僕は、昨年2月の本欄において、作者が何ものかを表現しようとするにあたっての“志《こころざし》”が決定的に欠落している作品であるという見地から細密な検討とともに強く批判し、その後、ほぼ同様の内容を雑誌『社会評論』に掲載した。(コラム374回)(社会評論157号)本稿でも、同作の結構に具体的に触れることを前もってお断わりしておく。 繰り返しになるので詳述は避けるけれども、『告白』という小説を成立させている――主人公である中学校の女性教師・森口悠子が、幼い娘・愛美を死に追いやった1年B組の男子生徒二名に対する復讐のため、エイズ患者であるパートナー(愛美の父親・桜宮)の血液を注入した紙パック入り牛乳を彼らに密かに飲ませ、HIV