小誌の創刊は、時代が昭和から平成となった直後の1989年4月20日である。平成時代は、政治の劣化や経済の停滞など、多くの「宿題」を残した。人々の記憶から忘れ去られないようにするには、正確な「記録」が必要だ。2号連続で「平成全史」を特集する。
小誌の創刊は、時代が昭和から平成となった直後の1989年4月20日である。平成時代は、政治の劣化や経済の停滞など、多くの「宿題」を残した。人々の記憶から忘れ去られないようにするには、正確な「記録」が必要だ。2号連続で「平成全史」を特集する。
福島第一原発事故から7年が過ぎ、放射線リスクをめぐる対立はかつてほどには目立たなくなっているが、対立がもたらした分断は、ローカルなコミュニティにもネット上にも残されている。このことは、「政治」が議会でのみ行われるのではなく、日常生活の細部でも常に起こっていることを再認識させる。 原発事故後の分断について「食」を通じた分析を行ったのが、『原発事故と「食」 市場・コミュニケーション・差別』の著者、社会学者の五十嵐泰正氏だ。原発事故後に千葉県柏市で消費者や生産者らの協働による社会運動を率いた経験ももつ五十嵐氏と、やはり社会学者で著書『社会運動と若者 日常と出来事を往還する政治』など運動参加者へのインタビュー調査を続けてきた富永京子氏が、若者のデモから“左派嫌い”が生まれる理由まで、幅広く語り合った。 人は「自分と似た人」の言うことしか聞かない? 富永:『原発事故と「食」』を読んでまず感じたのは、
取り出す練習をすることで、記憶は使えるようになる 出口:僕は最近、よく物忘れをしてしまうんです。この前の講演会でもライス元国務長官の名前が出てこなくて、つい「あの、黒人の優れた……」とか言ったら、会場から「ライスさん」と教えてくれて「ありがとうございます」ってなったりしました。 池谷:わかります。 出口:どうすれば忘れないようにできるんでしょう? 池谷:これはもう、仕方がないと思うんです。誰にでも起きますから。あえて言えば、忘れないためには「思い出す」訓練をすること。一応、私は記憶が専門なので、厳密にはいろいろ申し上げたいことはありますが、そこに尽きます。多くの人は「記憶」というと、詰め込むもの、覚えるもの、入力するものだと勘違いしています。しかし、記憶力は出力しないと鍛えられない。 出口:頭の中に入っているものですよね。 池谷:学校の勉強は詰め込みがすごいのですが、取り出しの練習はしませ
国内の大学の最高峰、東京大学。その将来有望な若手研究者が働く研究室─―そこは、そのイメージとはほど遠い苦境に陥っていた。 東大で物理学を研究する高山あかり助教は、研究室の現状をこう語る。 「プリンターのトナーや紙、そういった必需品の購入にも気を遣います。研究室の机と椅子も、他のところで不要になったものを譲ってもらいました。研究のための本は自腹で買うことも多いですね」 こうした物品の購入など研究を行うための経費は、基本的に各研究者に配られる「国立大学運営費交付金」から支払われる。これは文部科学省から各国立大学の財布に入り、そこから各研究者に配分される補助金だ。国立大学の研究者にとって運営費交付金は何にでも使える「真水」であり、研究の基盤となる資金だ。 昨今ノーベル賞を受賞した研究も、こうした自由に使える基盤的経費が充実していた恩恵が大きいことは、2015年にノーベル物理学賞を受賞した東大教授
日本ではトランプ次期大統領が孫正義ソフトバンクグループ社長と会ったことが大きく報じられているが、米国ではトランプがマイクロソフト創業者のビル・ゲイツと電話で8分間話したことを多くのメディアが報道した。電話でトランプと意気投合したゲイツは、電話の2週間後の12月中旬にトランプタワーを訪問した。ゲイツは大統領選挙中トランプを評価しないと示唆していたが、電話での会談後出演したテレビ番組では「宇宙開発を進めたジョン・F・ケネディ元大統領と同様に、トランプの米国はイノベーションを通し主導権を取る可能性がある」と持ち上げた。 ゲイツは地球温暖化問題を懸念しており、国連の会議に出席し解決のための支援を呼びかけるほど問題解決に力を入れている(『アマゾン、アリババ、ソフトバンクも ビル・ゲイツが募る革新的エネルギー同盟』)。彼のいま一番の関心事だが、温暖化懐疑論の立場に立つトランプとは大きく立場が異なる。
先進国で漁業は成長産業 日本の漁業は衰退の一途を辿っている。日本の漁業従事者は、ピーク時の100万人が、現在は20万人を割りこみ、さらに減少を続けている。平均年齢は60歳を超えた。漁村の限界集落化が進んでいる。日本の漁業は、縮小再生産どころか、消滅しかねない状況である。 漁業従事者の高齢化は、ここ数年間に始まったことではない。何十年も新規加入が途絶えた状況を放置してきた結果である。日本の漁業はすでに産業として成り立っておらず、一般の企業だったら、とっくに倒産している状態を補助金で維持している。漁業者の平均所得は、200万円程度。年金の足しにはなるが、これから家庭を持つ若者が、夢を持って参入できる環境ではない。「仕事がきつい。収入は悪い。そんな漁業には、いくら息子といえども、入ってこないのは当然です」と、年配漁業者は肩を落とす。 漁業の存続には、漁業収入の改善が急務である。中長期的に安定した
民主党は2009年衆院選のマニフェストで配偶者控除の廃止を掲げたが、13年度税制改正での廃止も取りやめ、結局4年連続の見送りをすることとなったようだ(11月6日読売新聞)。 なぜ配偶者控除の廃止が問題になるかと言えば、これによって、妻の給与所得が103万円を超えると家計の手取り所得が増えなくなり、女性の就労意欲を抑え、パートタイマーの賃金相場を下げているとの議論があるからだ。 もっとも、女性の就労意欲を抑えるのは配偶者控除だけでなく、夫の社会保険に加入できるか、自前で保険に加入しなければならないかの限度、給与所得で130万円の制約も大きい。さらに、妻の家族手当を払う基準を103万円にしている会社も多い。家族手当が2万円なら年に24万円で、これは大きい。 おおざっぱに言って、103万から170万円近くまで、働いてもほとんど手取り所得が増えないという状況になる(本稿の目的は、家計所得を最大化す
輸出が伸びない日本 韓国の李明博大統領が竹島に上陸したことと関連し「国際社会での日本の影響力も以前とは違う」と述べ、日本の国力が落ちたとの認識を示したことが話題になっている(8月14日産経新聞)。残念ながら、経済に関して言えば、これは明らかな事実である。 1990年にアジアの目抜き通りの交差点に立ってみれば、日本の家電、ハイテク、自動車企業の広告が圧倒していた。ところが今や寂しい限りで、韓国や中国企業の広告が進出している。 図1は、世界と日本と韓国の輸出数量指数の推移を見たものである。1990年から現在まで、日本の輸出は2.5倍にしか増大していないのに、韓国の輸出は11.4倍になっている。IMFのいう発展アジア(要するに日本を除くアジアと考えて良い)の輸出は11.7倍になっている。先進国である日本には発展途上国ほど輸出を伸ばすことはできないという反論があるかもしれないが、日本の伸びは世界全
日本は休みが多いと言われても、実感がわかない人がほとんどだろう。 実は祝日のような「一斉休み」の多さが、逆に長期休暇の取得を妨げている。 個人の判断で、休むときは大いに休み、働く時は大いに働く。 そんな生産性を上げる効率的な働き方を追求する時代が来ている。 「日本人はそんなに長時間働いて、人口もドイツの1.6倍なのに、GDP(国内総生産)はたかだか2倍ちょっと。生産性が低いんじゃないのか」 四半世紀以上も前の学生時代、ドイツ人学生に言われた言葉が忘れられない。当時は日本のGDPは米国に次いで2位、ドイツは3位だった。しかも、日本人の働き過ぎが批判されていた時代だ。ドイツ人学生はやっかみ半分で言ったのだろう。 その後、日本はバブル経済に突入、「24時間戦えますか」という三共(現第一三共ヘルスケア)の栄養ドリンク「リゲイン」のCMソングが大ヒットしたりした。日本の経済成長を支えた一因が長時間労
シェールガス革命が起きている 米国で、膨大に埋蔵されているシェールガスの増産が進んでいる。国際エネルギー機関(IEA)は、米国内のシェールガス埋蔵量は現在の生産量から計算すると約100年分あると報告している。 シェールガスによって、米国での天然ガス生産量は増加するとともにその価格が下落しており、天然ガスの自給率は目に見えて上昇している(図表1)。そして、今後ともさらに自給率は上昇し、天然ガスがより多くの分野で活用される方向が確実視されている。米国では、「シェールガス革命」との表現も定着している。 シェールガスの増産は、安価なエネルギー・電力価格をもたらし、天然ガスやエネルギーを使用する化学産業などの関連産業の採算や競争力を向上させて、大いに活気づけている。すでに50万人以上の雇用を生んでいるとの試算や、今後5年間毎年米国のGDPを0.5%押し上げるとの試算も発表されている。 さらに、天然ガ
民主党政権の終わりが近いと何度も言われてきたが、それでもなんとか持っている。ここで民主党政権とは何だったかと考えてみる価値はあるだろう。 ほとんど半世紀にも及んだ自民党政権に飽きたが、その受け皿がなかったという状態をともかくも破壊したのは民主党の功績だ。 民主党が、「コンクリートから人へ」というスローガンをもって2009年8月30日の衆議院選挙を戦ったとき、多くの人はなんらかの期待をもって民主党に投票したのだろう。私は、他はともかく、「コンクリートから人へ」というスローガンに全面的に賛成である。もっとも、世論調査によると、民主党が掲げた具体的政策、高速道路無料化、子ども手当、農家戸別所得補償などの個々の政策が、選挙民にそれほど高く評価された訳ではないようだ。 要するに、自民党政権でうまくいかないのだから、ともかくも代えてみたかったというのが、民主党の一番大きな勝因だったのだろう。 新鮮にみ
テレビ番組や週刊誌などが「放射能を抜く食べ方」を盛んに特集しています。やれ、「焼くのではなく煮物を」「牛乳よりチーズやバターを」「魚は内臓を捨てて」……。これらに根拠はあるのでしょうか? 煮たり茹でたりがよいのは、たしかだが…… 文献等によれば、焼くのではなく煮物を、というのは本当。東京電力福島原子力第一発電所の事故では、主に放射性ヨウ素と放射性セシウムが放出されました。放射性ヨウ素は、放射線を出して安定化するまでの期間が短く、放出されたほとんどの放射性ヨウ素はすでに、放射線を出す力を失っているので、もう気にする必要はありません。一方、放射性セシウムの一部の種類は、影響が長く続きます。そして、この放射性セシウムは水溶性です。 食品を焼いたり揚げたりすると、水分のみが蒸発して放射性セシウムは残ってしまいます。しかし、煮物にしたりゆでたりすると、放射性セシウムの一部は煮物やゆで汁に溶け出して行
「勘というのは、棚ボタ式に出てくるものじゃない。それまでに経験したことが体の中に残っているから、ピンとくるんです」 仕事でも何でも、「これだ」という直感がよい結果をもたらす例は少なくない。論理的でも科学的でもないだけに、いい勘をしている人は、とかくその天分をうらやましがられる。 血や肉になっている経験がリアルタイムに 出てきて、それでピンとくる 飯島澄男(いいじま・すみお) 1939年生まれ。東北大学大学院物理学科博士課程修了。91年に第5の炭素物質・カーボンナノチューブを発見。現在は名城大学大学院理工学研究科教授、NEC特別主席研究員などを兼ねる。文化勲章受章者。 写真:田渕睦深 しかし物理学者の飯島澄男は、勘とは経験の蓄積であり、決して天から降ってくるものではないと言う。飯島は1991年にカーボンナノチューブ(CNT)を発見。CNTは針状の結晶をした第5の炭素物質
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