(2009年8月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) アイルランドの有名な不動産王が持ち物をすべてまとめて、妻子とともにスイスに飛んだ。別の大富豪は、銀行債権者が自身の企業帝国の資産を清算するのを阻止するための法廷闘争の最中に病に倒れた。 だが、国の大富豪たちの窮状――彼らのヘリコプターは地上に釘付けにされ、外国の別荘は売りに出され、美術品のコレクションはオークションにかけられている――が、やつれたアイルランド国民の同情を呼ぶことはほとんどない。 「ケルトの虎」は今は昔 最近の不動産市場の崩壊と、それが銀行と国家財政にもたらした破滅的な爪痕は、かつて「ケルトの虎」と呼ばれたアイルランド経済とその国民を20~30年間にわたって足踏みさせかねないのである。 ブライアン・カウエン首相率いる中道右派政権は今、独立後88年間の歴史の中でほぼ間違いなく最も厳しい緊縮財政となる対策への支持